タケ類は数十年に一度、一斉に開花・枯死する多年生一回繁殖型の植物である。開花・枯死には周期性があり、モウソウチクでは67年周期で開花・枯死する株が知られている。しかし、タケ類がどのように開花年を認識して開花に至るのか、そのメカニズムは未だ不明である。 本研究は、東京大学千葉演習林で1934年から管理されている開花年限試験地のモウソウチクを使用して、日長・季節・年次レベルで変動する遺伝子を探索することで、タケの“時計遺伝子”を推定することを目的とした。このモウソウチクは1930年に発芽し1997年に開花・枯死した67年開花周期が確認された株の実生(子供)である。モウソウチク林において、2013年春に出筍した3稈を選択し、日変動を調べるために2013年8月8日10時から9日10時までの24時間、2時間ごとに葉のサンプリングを実施した。また、季節変動を調べるために2013年8月から2015年4月現在まで毎月1回、正午に葉をサンプリングした。サンプルからRNAを抽出し、データベースに登録されているモウソウチクの遺伝子発現ライブラリーから、日変化や季節によって発現に影響を受けると推察される遺伝子を選択し、RT-PCR法により発現解析を行った。 その結果、モデル植物の研究で日長変化によって開花に関与することが知られているCONSTANS(CO)遺伝子のモウソウチク相同遺伝子の発現が日変動すること、また、水不足や他の環境ストレスによって発現し開花を誘導するDof相同遺伝子の発現が季節変動することが明らかになった。 本研究により、一斉開花・枯死という特殊な生活史をもつタケ類においても日長や季節性を認識する遺伝子が働いていることが示唆された。今後継続してサンプリングを行い、これらの遺伝子の年次的な変化を追うことで、開花周期に関わる遺伝子の探索につながることが期待できる。
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