研究課題/領域番号 |
25870146
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川上 隆史 東京大学, 総合文化研究科, 特任研究員 (60638881)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ペプチド / Nアルキルアミノ酸 / リボソーム / ケミカルバイオロジー / タンパク質 / tRNA / リガンド / PUREシステム |
研究概要 |
本研究の目的は、人工改変した再構成型無細胞翻訳系(PUREシステム)を用いて大環状Nアルキルペプチドの大規模ライブラリーをリボソーム翻訳合成し、高速試験管内分子進化法を用いてそのライブラリーの中から標的タンパク質に結合する大環状Nアルキルペプチドをセレクションすることである。まず、tRNAに連結させた様々な環状Nアルキルアミノ酸(22種類)と再構成型無細胞翻訳系を用いて、それらの翻訳ペプチドへの導入について同定と効率の評価を行い、リボソーム翻訳基質として有効な環状Nアルキルアミノ酸を見い出すことに成功した。また、新規翻訳伸長因子elongation factor P(EF-P)を再構成型無細胞翻訳系に添加することによりNアルキルペプチドライブラリーの翻訳合成量を増加することができることを見いだした。また、翻訳後に生体直交性化学反応や酵素反応を用いることによって、直接的にはリボソーム翻訳ペプチドに導入することができない様々な荷電Nアルキルアミノ酸を、効率的に翻訳ペプチド内に構築することに成功した。 更に、40種類以上の大腸菌由来のtRNAを調製してNアルキルアミノ酸を連結し、再構成型無細胞翻訳系に加えてモデルペプチドの翻訳合成を行なった。その結果、大腸菌由来のtRNAGluあるいはtRNAAspを用いることにより、様々なNアルキルアミノ酸(Nメチルバリン、Nメチルロイシン、Nメチルイソロイシン、Nメチルトリプトファン、Nメチルシクロヘキシルアラニン、Nメチルフェニルグリシンなど)の翻訳ペプチドへの導入効率を向上させることができること、Nアルキルアミノ酸の重合効率(連続導入効率)を向上させることができること、NアルキルペプチドのmRNA提示効率を向上させることができることも見いだした(論文投稿中(研究代表者責任著者))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リボソーム翻訳ペプチドに効率的に導入可能な環状Nアルキルアミノ酸を発見し、新規翻訳伸長因子elongation factor P(EF-P)が非天然Nアルキルアミノ酸の連続導入効率を向上させることを発見し、翻訳後変換反応を用いて荷電Nアルキルアミノ酸を効率的に翻訳ペプチド内に構築することに成功し、その他様々なNアルキルアミノ酸を効率的に翻訳ペプチドに導入可能なtRNAGluおよびtRNAAspを発見したためである。
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今後の研究の推進方策 |
様々な構造を持つクロロアセチルNアルキルアミノ酸、クロロ酢酸、クロロメチル安息香酸を翻訳開始tRNAに連結して再構成型無細胞翻訳系(PUREシステム)に加えることにより、翻訳開始効率の良いNアルキルアミノ酸および(アミノ基を持たない)カルボン酸の同定を目指す。そして、その翻訳開始効率の良いNアルキルアミノ酸および(アミノ基を持たない)カルボン酸、新規翻訳伸長因子elongation factor P(EF-P)、大腸菌由来のtRNAGluなどを用いて、大環状Nアルキルペプチドの大規模ライブラリーを実際にリボソーム翻訳合成し、高速試験管内分子進化法を用いてそのライブラリーの中から標的タンパク質に結合する大環状Nアルキルペプチドをセレクションする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画が非常に順調に進んだため、計画よりも研究費を抑えることが可能となった。また、所属施設に共用機器が導入されたため、計画よりも研究費を抑えることが可能となった。 引き続き、有機合成試薬、オリゴDNA、分子生物学・生化学試薬、細胞培養試薬などの物品費、学会発表のための旅費として使用する計画である。
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