研究課題/領域番号 |
25870154
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
藤波 伸嘉 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (90613886)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オスマン帝国 / 公法学 / 国際法学 / 国法学 / ギリシア / トルコ |
研究実績の概要 |
本研究の二年目に当たる平成26年度には、前年度から継続して、19世紀末から20世紀初頭に至るオスマン公法学の成立と展開についての基礎的な情報や史料の収集を行なった。これと並行して、この主題に関わる論文をいくつか執筆し、また、現時点での成果として、いくつかの論考を公表することができた。具体的には以下の通りである。 まず、8月から9月にかけて、トルコ共和国イスタンブル及びギリシア共和国テサロニキで史料収集を行なった。前者では、首相府オスマン文書館にて複数のオスマン公法学者に関わる未刊行の文書史料の収集を行なった他、アタテュルク図書館及びイスラーム研究センター付属図書館で、関連の定期刊行物や刊行史料の収集を行なった。後者では、マケドニア研究協会附属図書館及びアリストテレス・テサロニキ大学にて、同時期のギリシア人の公法学者や歴史家に関連する史料を収集した。この際、前年度に引き続き、マケドニア大学のスタマトプロス准教授と、上記研究課題につき意見交換を行なった。 またこれに加え、経費上は次年度繰り越しの扱いになるが、3月には再びトルコ共和国イスタンブルに赴き、夏に引き続いて、複数の研究機関で史料収集を行なった。 以上の在外調査に際しては、現地の古書店や新刊書店を積極的に調査し、最新の研究書に加えて、オスマン語やギリシア語のものを中心に、いくつかの貴重な同時代史料も購入することができた。 そして、別項に記す通り、上記研究課題に関連して平成26年度にはいくつかの論考を公にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度に公にしたいくつかの論考を踏まえ、また夏及び春の在外調査を受けて、今後の研究の方向性について、計画していた以上に一層の明確な道筋を描くことができた。 まず、論集『宗主権の世界史』に寄稿した二本の論考において、ムスリム・トルコ人とギリシア正教徒の双方の文脈から、オスマン帝国と主権国家体系との相互関係について、「特権」概念を軸に、従来にない複眼的な視点からの考察を行なうことができた。その上で、その見取り図を前提に、国際法学、国法学、行政法学を三本柱とし、ムスリムと正教徒、オスマン帝国とギリシア王国のそれぞれを象限とする全体図の中で、19世紀末から20世紀初頭にかけての公法学史の展開を、同時代の政治史・政治思想史の展開に位置付けつつ明らかにするという本研究課題の世界史的な意味とその射程とについて、改めて明確化することができた。具体的な成果を挙げるためにはなお一層の史料収集及び史料読解が必要なのは言うまでもないが、昨年度に比しても、現時点でかなり明確な今後の研究の見取り図を描くことができたのは、今後の研究を推進する上で大きな進展だと言うことができる。そしてそれは、昨年度に引き続く、今年度の史料収集の成果を踏まえて初めて可能となったことであった。 以上の理由から、今年度は当初の計画以上の計画の進捗が見られたと言うことができる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、今年度の研究成果を踏まえて、今後は、上記の通り明確化した研究計画の実現に向けて、一層の史料収集及び論文執筆を行なう。イスタンブルやテサロニキでの史料収集を継続しつつ、19世紀後半のアブデュルハミト二世治世から20世紀初頭の第二次立憲政期に至るオスマン・ギリシア比較公法学史という全体像の中に位置付けるべく、順次史料読解及び論文執筆を行なっていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
史料収集のため、年度末にトルコ共和国への出張を行なったが、そのための経費が今年度分の残額では不足するので、その分の支出に充てるべく、今年度の残額を次年度の経費と併せて使用することとしたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の通り、年度末にトルコ共和国への出張を既に行なっているので、後は経理処理をするのみとなっている。
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