近代オスマン国制の特徴を、当事者であるオスマン臣民の視座から考察することで、西洋中心主義に堕さない形での、新たな世界法学史の構築の一助とすることを試みた。具体的には、オスマン国制において特権的な地位を保ち、かつしばしばその地位が国際法上の争点ともなった正教徒共同体を素材に、それをめぐるムスリム国際法学者の論考を分析した。その結果、上述の問題を更に深く考察するためには、国際法のみならず国内法、とりわけ憲法学/国法学からの接近も必要なこと、また、オスマン帝国のみならずギリシア王国の正教徒による法学的議論も参照する形での接近が求められることが明らかになった。
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