研究課題/領域番号 |
25870155
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森山 崇 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (80534346)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | オルガネラDNA / ゲノム複製装置 / 葉緑体 / ミトコンドリア / シアニジオシゾン / 進化 |
研究概要 |
葉緑体やミトコンドリアなどのオルガネラは独自のDNAをもち、このDNAはDNAポリメラーゼをはじめとするいくつかの酵素から構成される複製装置により複製されている。高等植物のシロイヌナズナにおいては、多くの酵素が葉緑体とミトコンドリアの両方に局在、またはホモログ酵素がそれぞれのオルガネラに局在しており、これにより両オルガネラにおけるゲノム複製装置構成酵素がほぼ同一であることがわかっている。その他の植物や藻類においては、まだあまり研究が進んでいない。私たちは、オルガネラのDNAポリメラーゼが、真核生物の進化の過程において、何度か異なるタイプの酵素に入れ替わった可能性があるという説を提唱しているが、このような現象は他の複製関連酵素でもおきている可能性がある。そこで、紅藻シアニジオシゾンにおいて、葉緑体とミトコンドリアのそれぞれの複製関連酵素の構成を調べた。まずは、シアニジオシゾンのゲノム塩基配列から複製関連酵素を同定し、次にオルガネラ局在の可能性のある複製関連酵素を選んだ。これらの酵素の細胞内局在を、GFPを用いて調べた。その結果、葉緑体とミトコンドリアでは、DNAポリメラーゼとDNAリガーゼは共通だが、その他の酵素(プライマーゼ、DNAヘリカーゼ、DNAトポイソメラーゼ、プライマー除去酵素、および一本鎖DNA結合タンパク質)は、タイプの異なる酵素がそれぞれのオルガネラに局在していることがわかった。複製関連酵素の進化的起源を調べるため、詳細な系統解析をおこなった結果、シアニジオシゾンでは、細胞内共生に由来する酵素、特に葉緑体の起源と考えられているシアノバクテリアに由来する酵素が多く保存されていることが示唆された。これらの結果から、DNAポリメラーゼ以外の複製関連酵素は、進化の過程においてDNAポリメラーゼ以上に入れ替わりが生じやすいことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オルガネラ局在DNAポリメラーゼであるPOPにアミノ酸置換を加え、酵素活性への影響を調べる予定であったが、オルガネラゲノムの複製装置の進化をより広い視点から理解するため、25年度は、紅藻シアニジオシゾンにおいて、葉緑体とミトコンドリアに局在するゲノム複製関連酵素の局在を調べると共に、系統解析をおこなった。これらの結果から、真核生物全体における、オルガネラゲノム複製装置の進化的な移り変わりに関するモデルを提唱することができた。本研究目的は、オルガネラゲノムの複製に関わる酵素の進化的検証を行うことであり、本研究の目的達成のための基礎的な結果を得ることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、オルガネラゲノム複製酵素であるPOPのアミノ酸改変をおこない、まずはin vitroにおいて改変による酵素活性への影響を調べる。具体的には、DNAポリメラーゼの連続合成能に関わるアミノ酸の変異、逆転写活性に関わるアミノ酸の変異を導入する。酵素活性に変化が見られれば、その改変を加えた遺伝子を紅藻シアニジオシゾンに形質転換し、オルガネラゲノムの複製状態や細胞周期への影響を調べる。また、DNA配列への影響を調べるため、改変酵素を導入した細胞について、次世代シークエンサーによりオルガネラDNA配列を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬の購入量が予定よりも下回ったため、次年度に若干繰り越すこととなった。 繰り越した金額については、26年度において全額を試薬購入費に充てる。
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