研究課題
平成27年度では、平成26年度までに得られたデータと、過去に蓄積されたデータを比較し、福島第一原子力発電所事故(2011年)後の放射性物質の動態について、様々な視点から考察を行った。そのうちの一つに、日本における小麦・米の生物的半減期について検討を行った論文がある。放射性セシウムや放射性ストロンチウムは、自身の半減期に則って減衰するが、環境中では、雨水や流水、土壌の性質によって毎年の土壌の濃度が物理的半減期以上に大きく減衰する事が知られている。この傾向を中長期的に観測したデータを用いたことによって、2011年の事故後の動態を予測する事が可能となった。その結果として、年1 mSvの追加被ばく量を基準として定められた現在(2016年)の一般食品中の基準値100 Bq/kgは、放射性セシウムと比較して僅かな飛散量であったとしても、長期的(数十年単位)には、放射性ストロンチウムの動態に大きく左右される事を示した。このように、沈着した放射性物質が雨水などの自然現象で移動すること自体は予測が付きにくい事象であっても、これまでに蓄積されたデータと比較することで、将来の傾向をつかむことを可能とした。これらの動態研究に加えて、2013年に発生した福島第一原発3号機オペフロ上のガレキ撤去に伴うダスト飛散と、その年夏以降の福島県南相馬市の圃場で発生した新たな米の汚染について、実測値とシミュレーションにより、両者の因果関係を強く示唆する結果も得ることができた。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 6件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry
巻: 307(3) ページ: 1807-1810
10.1007/s10967-015-4352-6
巻: 307(3) ページ: 2117-2122
10.1007/s10967-015-4407-8
Environmental Science and Technology
巻: 49(24) ページ: 14028-14035
10.1021/acs.est.5b03155
巻: 307(3) ページ: 1787-1793
10.1007/s10967-015-4386-9
日本水産学会誌
巻: 81(2) ページ: 243-255
10.2331/suisan.81.243
Analytical chemistry
巻: 87(17) ページ: 8651-8656
10.1021/acs.analchem.5b02265
Environmental Science & Technology
巻: 49(5) ページ: 2875-2885
10.1021/es5057648