研究実績の概要 |
四次元と二次元の場の理論の関係の解明がこの研究の主要目的であるが、昨年までの(私のみならず、世界的にも)研究においては、出発点である六次元の理論は所謂 N=(2,0) 理論という最大超対称理論を使っていた。本年度は、研究の視点を広げるため、出発点である六次元の理論を N=(1,0) 理論という超対称性が半分の理論にすることを考えた。しかし、N=(1,0) 理論については(私のみならず、世界的にも)これまであまり研究がなされておらず、基本的な性質がいろいろと未解決のまま残されていた。そこで、私は、共同研究者とともに、まずはこれらの N=(1,0) 理論の「量子異常」とよばれる物理量の、系統的な決定方法を見出した(査読、出版済み)。また、N=(2,0) 理論を曲がった二次元空間に置いても、N=(1,0) 理論を平らな二次元空間に置いても、残った四次元空間には N=2 超対称性が生じるので、一体これらの理論はどのような関係にあるのかを調べるのが基本的である。これに関しては、共同研究者とともに、ある自然なクラスの N=(1,0) 理論を平らな二次元空間においた理論が、N=(2,0) 理論を3つ穴つき球面においた理論と等価であることを示した(プレプリント発表、査読中)。 また、六次元と四次元のあいだの五次元の場の理論についても研究を開始した。五次元の場の理論では、強結合極限にゆくと、理論のラグランジアンに自明に存在する対称性よりも、理論の対称性が拡大することがしばしばある。この原因を調べた論文は既存のものがいくつかあったが、煩雑な計算を伴った。私は対称性の拡大の原因をもっと直接的に、簡単に理解できることを示した(査読、出版済み。) また、それ以外に、昨年までの研究を他の研究者に広く伝えるため、レビュー論文を執筆した(査読済み、出版中)。
|
今後の研究の推進方策 |
25年度の報告書のこの欄では、初年度の研究の進展状況を鑑みて、26年度の研究の方策を記述した。そこでは、(A)超対称性の少ない六次元の N=(1,0) 理論を考察すること、また、(B)それらの理論の二次元空間でのコンパクト化を考察すること、をあげた。上記「研究実績の概要」にあるとおり、(A) に関してはまずまずの進展があった。そこで、27年度は、(B) についての研究を推進することが重要であろうと考える。(B) に関しても、すでに、特定の N=(1,0) 理論の平らな二次元空間へのコンパクト化に関しては上記のとおりプレプリントを発表しているが、これを拡張して、同じ特定の理論の曲がった二次元空間へのコンパクト化、および、別のクラスの N=(1,0) 理論の平らな二次元空間へのコンパクト化を考察したいと思っている。 また、一般にこれまでの超対称性ゲージ理論の研究においては、超対称変換の計算等は手計算によってなされることが(私のみならず、世界的にも)多いように思われる。これは、業界全体として、時間の無駄遣いではないかと思うので、なんとかこのような計算に関しても、コンピュータを利用して(半)自動化ができないか、を模索したいと思っている。
|