研究課題/領域番号 |
25870159
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
立川 裕二 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (10639587)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超共形場理論 / 物性理論との関係 |
研究実績の概要 |
本年度はこの科研費の最終年度であった。
まずは、昨年度にひきつづき、六次元最小超共形理論についての研究を行った。特に、六次元の理論の中には二次元の励起が存在するが、その励起の性質について、共同研究者と共著論文(査読出版済み一通、査読中一通)を発表した。また、申請書には、六次元最大超共形理論の自然なオービフォールドとして得られる系を調べることも有用であるとそもそも書いたが、これに関しては昨年度から行っていた共同研究者がようやく完成し、論文として発表した(査読中)。この後者に関しては、もともと日本の研究者で行っていたところ、イスラエルを中心とするグループも別個にほぼ同じ研究をしていることが昨年夏に明らかになり、異なる場所で独立に同じ研究を行って人類全体のリソースの無駄とならないように、その後は我々のグループと彼らのグループで合同して一つの論文としたものである。
もうひとつは、研究の過程で、物性物理との思い掛けない関係があらわれてきたので、それについて数通の論文を発表した。まず、トポロジカル弦理論にあらわれる構造が、二次元格子系に磁場を掛けた中での電子の量子力学的運動に関連する「ホフスタッターの蝶」という構造と数学的に等価であることが分かったので、それについて共著論文を発表した(査読出版済)。また、申請書のテーマであった六次元場の量子論の性質から従う四次元場の理論の双対性が、近年のトポロジカル物性における重要な問題のひとつである「トポロジカル超伝導体の分類の相互作用による崩壊」現象の理解に使えるということがわかったので、それに関する共著論文も発表した(査読出版済み)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時点での目標であった、異なる場の量子論の等価性の直接理解に至ることは残念ながら出来なかったが、異なる場の量子論の等価性という現象が、当初予測していたよりもさらに多数の局面で起こるということがわかった。昨年度も書いたように、申請当初では六次元最大超対称理論というもののみが考察されていたが、それより多数の例を含む、六次元最小超対称理論というものを調べる必要性がこの研究課題の初期にわかったので、研究の大部分はそれに注力することとした。そのため、初期の目的への進捗という意味ではむしろ(3)の「やや遅れている」を選ぶべきであろうが、初期に予測していなかった方向への大きな進展があったという意味で、(2)の「おおむね順調に進展している」と自己評価して良いのではないかと思っている。特に、最終年度においては、もともと全く予期していなかった、物性物理における数理現象とも関連が見つかってきていることは重視したい。
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今後の研究の推進方策 |
この研究課題は平成28年度が最終年度であったが、初期の目的である「直接理解」には至ることができなかった。そのため、今後とも、機会に触れて、この問題を追究していきたいと思っている。特に、申請書に記述したアファインヘッケ代数との関連であるが、平成27年度に、すこし別の側面から、関連するアファインブレイド群が六次元最小超対称理論の構造を強く制限していることをみつけたものの、まだその研究を磨き上げて発表するに至っていない。であるから、次の第一歩は、この件について論文を書き上げることであろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者の立川の娘が一歳であったため、家を離れて長期間の出張を行っての研究会の参加等をあまり行うことができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
これまでのこの研究課題での研究結果を発表するための旅費等に用いたい。
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