研究課題/領域番号 |
25870160
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
神谷 好郎 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教 (90434323)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 素粒子実験 / 未知粒子探索 / 重力に準ずる相互作用 / 時空構造 / 小角度中性子散乱 / 湯川型散乱ポテンシャル / キセノン / 高純度ガス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中性子と原子ガスの散乱角度分布を精密に測定し、既知の散乱過程による分布からのずれを評価することで、結合の弱い、重力に準ずる新しい力の媒介粒子を探索する事である。 空間の余剰次元理論などを内在する素粒子標準理論を超えた理論モデルのなかには、質量やバリオン数などを結合荷とした、重力に準ずる新しい力を示唆するものがある。それらは、電磁気力と比べると非常に弱いものであるが、本研究において観測にかかる可能性があった。
今年度前期に二回目の実験を行い、予定通りの統計量を取得した。前年度後期に行われた一回目の実験データと合わせ解析をしたところ、2008年にフランスのグループが付けていたリミットを、0.04 nm から 4 nm のレンジにおいて、最大一桁の更新に成功した。この結果は2015年4月に、 Physical Review Letters から出版される。 本研究の拡張として、軽い質量領域へ未知粒子の探索領域を広げることを考える。ひとつの可能性として中性子レンズを用いた実験の設計を進めたところ、現有する物だけで十分な感度を得ることは難しいことが判る。そのため、モンテカルロ法を用いて最適なレンズの焦点距離やサイズなど、工学設計を詰めている。結果は、日本物理学会第70回年次大会において報告した。 また、散乱ターゲットとなるキセノンガスの純化装置を設計している。純化ラインのプロトタイプ制作とその評価は終わっており、期待される性能が出ていることが確認されているが、本年度は、それらの知見を元に、さらに高感度を目標とする次期実験で運用できるよう開発を進めてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定通り二回目の実験を行い、期待される統計量を取得した。解析の結果、現在の world limit を最大一桁改善することに成功し、原著論文として報告した。これらは、当初の計画通りである。その上で、中性子レンズを用いた次期の実験設計を検討し、軽い質量領域へ未知粒子の探索領域を広げる可能性を明確にすることができた。この点を考慮して、当初の計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2015年4月に結果が原著論文として出版される。今後は、国際会議などを通して結果を社会へ還元することを検討する。また、中性子レンズの制作へ向けた予算獲得を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿論文の出版が年度内とならなかったため、出版経費と国際会議の参加費等を次年度に繰越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
論文の出版費用と国際会議参加費での使用を計画している。
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備考 |
UTokyo Research (http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/utokyo-research/)において、研究内容と成果について掲載予定
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