研究課題/領域番号 |
25870163
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菊池 康紀 東京大学, 総括プロジェクト機構, 講師 (70545649)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 未利用エネルギー / さとうきび / 食糧 / バイオマス |
研究概要 |
農業プロセス、工業プロセスにおけるプロセスパラメータを整理・体系化し、それぞれの決定メカニズムを解析した。具体的には、農業プロセスであれば品種改良や営農操作といった技術・運転オプションによって、植物が植物資源が持つ特徴である成分組成や単収といったパラメータが決定されうる。このとき、最終的な結果を左右するものとして気象条件等の変動の大きな要素も関係するため、定量的に解析するためにはこれらの要素についても同時に解析を行った。工業プロセスに対しても同様にパラメタの整理を行い、農工プロセスを設計する際に決定しなければならない変数を特定した。 パラメータの解析と同時に、農業・工業プロセスの現状の実態を分析するために、具体的なケーススタディとして種子島における甘味資源作物(さとうきび)に関し、植物資源技術と植物資源変換技術の調査を行った。現地農業研究センター等の支援を得て、植物資源の生育過程における変動性を把握し、その結果として実際の工業プロセスがどのように対応して製糖を行っているかを、プロセスフローを分析することで特定した。製糖に関しては、さとうきび由来の成分のフロー以外に、製糖工場内のエネルギーバランスの解析を詳細に行い、植物由来の未利用エネルギーの存在を明らかとするとともに、その有効利用が大きく環境負荷の低減に貢献しうることを定量的に評価した。 原料変換プロセスに関しては、石油化学基礎製品の合成経路を設計し、ほぼすべての基礎製品の合成が可能であることを明らかにした。同時に、石油精製においてバイオマスによる代替を行うことがマス・ヒートバランスにどのように影響するかを、化学プロセスシミュレータによって解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、具体的なケーススタディである種子島における農業研究センター並びに製糖工場との共同体制を構築することができたため、運転稼働記録や現実におきている課題について、詳細なデータを収集することができた。特に、植物資源由来の未利用エネルギーが多く存在していることが明らかとなったことで、農業・工業を横断的に解析することが、物質の製造におけるエネルギーについても自立させうること、場合によってはさらに他の産業にもエネルギーを供給する産業共生システムを構築しうることまでが明らかにとなり、地域システムにおける研究意義を高めることに成功した。 また、公益社団法人 化学工学会における次世代エネルギー社会検討委員会等の協力を得ることもでき、新規技術の開発を行う研究者からも情報を収集し、モデル化のための基礎を構築することに成功した。 以上より、本研究は概ね順調に進展している考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に構築したモジュールを結合させ、農業・工業統合モデルを構築する。ここでは、それぞれのモジュール間の結合におけるパラメータ間の関係を整理しながら、数理的に関連づける。例えば、農業側の出力である甘味資源作物の品質項目である、組成や単位圃場あたり収量はプロセスの効率や規模に影響しうる。甘味資源作物の品質は、品種のみならず圃場整備や肥培管理、収穫時期・方法とも密接に関わっている。また、原料変換・製品製造プロセスから発生する、繊維分や発酵残渣などの副製品は、それぞれ燃料や他製品の原料、圃場リサイクル肥料などになりうるため、プロセスの歩留まりや製品としての利用計画によって全体のエネルギー収支や農業プロセスのインベントリが変化しうる。これらのモジュール間関係の整理と数理モデル化を行う。 農工統合プロセスモデルにより、任意のプロセスパラメータや制約条件のセットで構成されるシナリオに対して、農工全体の製品製造量や環境負荷等のシステムの性能を評価可能となる。プロセスシステム設計のためには、シナリオの設定だけでなくこういった評価結果に対して解釈や改善案を導出する仕組みが必要となる。そこで平成26年度においては上記の農工統合プロセスモデルの構築に加えて、農工横断型の設計手法として、各プロセスの技術オプションが適用できる範囲と条件を明らかにしながら技術情報を整理し、汎用的に利用できるデータベース構造を設計する。このとき、既存のバイオマスプロジェクト等のケースについても、その適用地域、前提条件、構築できたプロセスシステムの性能、システム内部での物質やエネルギー、経済的価値の挙動などについても、既存のバイオマスタウンデータベースなども参考にしながら整理して格納できるような構造とする。構築したデータベースと農工統合プロセスモデルを組み合わせて使用するシステム設計手法のフレームワークを構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
対象地域として選定している種子島におけるさとうきび栽培は、12月に製糖を開始し、4月末まで行う。現場の稼働記録を収集し解析することを目的としており、その調査のための出張旅費の発生が、当初、3月末を予定していたものを4月末以降に変更し、製糖期間終了後の全データを解析することになったため、次年度使用額が生じた。 2014年度非製糖期間(4月~9月中)に種子島を訪問し、全データを取得するための出張を行う。
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