研究課題/領域番号 |
25870163
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菊池 康紀 東京大学, 総括プロジェクト機構 「プラチナ社会」総括寄付講座, 講師 (70545649)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 地域資源 / 未利用資源 / エネルギーシステム / 高付加価値生産 / 社会経済性 |
研究実績の概要 |
サトウキビ産業を例にとり、農業・工業の両プロセスに関する現場調査、ならびに数理科学的な解析を行うことで、農工を横断する統合プロセスモデルを構築した。まず、農業側の技術オプションである育種・品種選定、圃場整備・施肥などの営農操作を説明する変数を特定した。品種は参考成績書や実際の栽培記録、営農操作については自治体発行の栽培指針などを参考に、施肥量とサトウキビの成長度を結びつけるような数理モデルを設計、開発した。さらに、工業プロセスについては、製糖工場、精製糖工場の実際のフローを解析し、物質と熱のバランスをとりながら、農業側技術オプションの変化が影響する範囲を特定して農業プロセスモジュールと結合させた。実際に、農・工それぞれの技術オプションが関連合いながら、プロセスシステムの設計やオペレーション、制御に与える影響を定量的に解析できるモデルを構築した。 植物資源を供給することができる一次産業として、林業に関する情報を収集できる機会を得た。種子島の一市二町(西之表市・中種子町・南種子町)から研究への協力を得ることに成功し、地域の資源としての農地・林野における生産性が農林業における技術オプションによってどのように変化しうるかを解析し、利用可能な植物資源の賦存量をより正確に求めることに成功した。これにより、農林業プロセスにおける高付加価値製品としての食料・素材の生産可能量、バイオマスの変換により得られ得る化成品もしくはエネルギーの生産・発生量を分析し、地域における各種プロセスの社会経済的価値に関する評価手法の検討が可能となった。 なお、サトウキビ産業における統合プロセスモデルについては2報の論文が準備中であり、農林業とエネルギーの関係性については1報の論文がAccepted with minor revisionとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
プロセスモデルの構築に関しては、九州・沖縄農業研究センター、地元製糖工場の協力を得ることができたのは当初の計画通りであった。これに加え、平成26年度では、同時に地元自治体、農協、森林組合等からの協力を得ることも可能となり、当初の計画以上に植物資源の賦存量ならびに将来的な生産可能性を把握することができるようになった。平成25年度に可能性を見出した地域における産業共生システムについても、地元のでんぷん工場、焼酎工場、商工会やホテル・宿泊業などの協力を得ることに成功し、詳細なエネルギー需要データを把握することができるようになったため、当初の計画以上に具体的なシステムの設計や課題の抽出を行うことができるようになった。 具体的なケーススタディにおけるモデル開発だけでなく、方法論としての構築を進めるために、種子島以外の地域として、和歌山県、青森県、佐渡島における地域特性と植物資源由来の製造システムの導入可能性についても調査可能となっており、特定の地域以外で水平展開可能なプロセスシステムの設計・評価手法の構築を目指すことができるようになってきた。 以上のことから、当初の計画以上に親展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたり、過去2年間で開発していたモデル完成とケーススタディの実施を行い、システム設計・評価手法として確立していく。サトウキビ産業のモデルについては、同様にサトウキビ産業が存在する南西諸島への応用展開ケーススタディを実施する。また、植物資源由来のシステムとして、農業・林業を組み合わせたエネルギーシステムの設計を和歌山県、青森県、佐渡島などに対して行い、実際に現地において導入可能性があるかどうかを調査・分析することで、構築したモデルの有効性を確認する。 システムの評価の観点として、地域の社会経済性を加味した評価手法を考案する。具体的には、産業連関表などのような経済的な定量化手法とリンクさせることで、地域における製品生産能力の評価に経済循環や雇用創出といった観点を盛り込んで、プロセスと技術のオプションを評価可能にする。得られた結果に対しては地域の自治体、農協や森林組合等団体、関連企業、さらには地域外で同等の製品を製造する企業などにヒアリング調査もしくは簡易なアンケート調査を行うことで、植物資源由来の製造システムが持つ社会受容性の評価を試みる。 研究成果全体をまとめながら、システムの設計・評価手法として、植物資源の特性を有効利用し社会経済性、環境性、持続性に貢献する製品製造の在り方を議論するための枠組みを考案する。機能モデリング手法IDEF0や統一モデリング言語UMLなど、作業や情報の構造を可視化するツールを用いて、開発した手法を水平展開可能な形に構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ケーススタディとして取り上げている種子島において、当初計画以上に研究協力を得ることができるようになり、旅費として計上していたものに不要なものが出てきた分、使用額が減っている。計算能力の増強のためにワークステーション等を購入したが、旅費の節約分が大きく、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
研究協力を得ることができた地域が複数あるため、ケーススタディの幅を広げ、情報を多地域から獲得し、研究を遂行するための旅費にあてる。最終年度として手法論を一般的なものに作り上げるため、学会等にも参加し、研究発表および討論を行う。
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