平成26年度までに構築してきた、農工横断型のプロセスシステムモデルを、実際の産業現場に適用するケーススタディを行い、モデルの検証および改良を行った。まず、平成26年度までに主に情報を収集してきた製糖工場Aにおいて、農業側・工業側の技術オプションの適用により、原料糖の生産性や場内の蒸気フロー、余剰として発生するバガス(搾りかす)の量などの変化を分析するために、各年次データを用いた評価を行った。技術オプションによっては場内に新しい熱の需要が発生することも明らかとなったため、温熱/冷熱の区別をつけながら、製糖工場における技術の実装に必要な物質・エネルギーの流れを可視化できるようにモデルを拡張した。さらに、国内の他の地域にある2工場についても同様な解析ができるかを試行した。結果、幾つかのデータライブラリの更新が必要ではあるが、同じモデルフレームで他の工場・地域でも議論できることが分かった。 構築してきたモデルをベースとしつつ、地域の社会経済性に与える影響を分析するための枠組みとして、産業連関表やアンケート調査などのツールとの連携について検討を行った。産業連関表においては、これまで売電や売熱を行っていない製糖工場からの新たな生産を表現するために部門の追加を行った表の拡張が必要であるが、構築したモデルがこの拡張において必要となる物質・エネルギーの流れを出力できるものであることを確認した。また、アンケート調査については、実際に調査が展開された他の事業からの協力を得て、サトウキビ由来のバガスに関する選好性を調査することに成功した。サトウキビ地域におけるサトウキビへの期待の高さを分析結果から把握でき、モデルシミュレーションによる定量化の意義を確認できた。 さらに、本研究で行ってきた地域における物質・エネルギーのフロー分析や技術実装をIDEF0モデルとして可視化し、他地域への水平展開を議論可能とした。
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