研究課題/領域番号 |
25870164
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
笹川 俊 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (90551565)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 静止立位姿勢 / 神経制御 / バイオメカニクス / 逆動力学 / 関節間協調 / 発育発達 |
研究概要 |
ヒト静止立位時のバランス制御という運動課題は、これまで足関節まわりに行われる単関節動作として、過度に簡略化される形で、分析・検討される事が大半であった。本研究の目的は、この運動課題を、本来の多関節動作として扱い、関節間の運動協調に着目した分析を通じて、その制御メカニズム、発育・発達に伴う習熟、加齢・疾病に伴う機能低下のプロセスを明らかにすることであった。 健常成人を対象とした研究では、逆動力学の手法を用いて、関節間に生じる力学的な相互作用に対し、中枢神経系がどのように対処しているのかについて検討した。結果、足関節と股関節における正味のトルク(筋トルク、重力トルク、角速度依存トルクの総和)は、それぞれ、足関節と股関節に同程度の大きさの角加速度を生じさせている事、両関節において、足関節と股関節の正味のトルク由来の角加速度は互いに逆位相の関係にあり、互いの運動学的な影響を相殺している事が示された。これらの結果は、ヒトの中枢神経系が、多関節動作においては不可避的に生じる関節間の力学的相互作用の性質を巧みに利用する事により、立位時の身体各関節に生じる角加速度の振幅を低減している事を示唆するものである。 また、成人を対象とした研究とは別に、幼児や児童を対象として、静止立位時の床反力、キネマティクス、筋活動などを測定する実験を実施した。現在は、それらのデータ分析を進めるとともに、得られた結果は随時、国内外の学会で発表、学術誌に投稿するなどしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常成人を対象とした研究では、関節間運動協調に関する未知のメカニズムを明らかにする事ができた。この結果を原著論文としてまとめ、論文はJournal of Neurophysiology誌に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
立位姿勢制御能力の発達を知るためには、幅広い年齢層を対象とした測定を実施する必要がある。現在分析を進めているデータは、保育園児を対象としたものであるが、今後は、小・中学生にまで分析の対象を拡大する必要がある。 また、来年度以降は、高齢者や障害者を対象とした実験にも着手する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の実施順序に変更が生じたため、当初、初年度に購入を予定していた機材を購入しなかったため。 上記の機材は、研究期間の二年目以降に購入する予定である。
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