研究期間最終年度には、健常若齢者を対象として、安静立位バランスの制御方略に見られる個人差と、それを適切に評価するための方法について検討を行った。その結果、身体における複数の関節間に見られる運動学的(キネマティック)な協調パターンは身体機械力学系の特性によって一意に決まってしまうため、評価指標としては適切ではないこと、力学的(キネティック)な協調パターンによって評価すべきであることが明らかとなった。この研究成果はSociety for Neuroscience(北米神経科学学会)の学会大会「Neuroscience 2016」において発表を行った。研究期間全体としては、加齢にともなう安静立位姿勢動揺の振幅増大が関節間の運動協調性の低下によってもたらされることを明らかにするとともに、安静立位時の関節間運動協調性を適切に評価するための手法を探索した。また、本研究課題のもう一つのテーマである「発育発達」に関しては、幼児期・学童期においては、発育発達とともに関節間の運動協調性が最適化される可能性があることを明らかにするとともに、上記協調性を簡便に評価するための測定・分析手法について検討を行い、その妥当性を検証した。これらの研究成果は、立位姿勢制御能力の発育発達・加齢低下のメカニズムの一端を明らかにするものであると同時に、その適切な評価方法を確立するための手掛かりとなるものである。研究成果の一部は既に原著論文として出版されており、今後は残りの研究成果を早急に原著論文化していく。
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