本研究では、放射線事故あるいは癌治療において高線量の放射線が腹部に照射された場合に消化管上皮組織が破綻して生じる急性障害(gastrointestinal syndrome; GIS)の病態形成に自然免疫が寄与するかを検証した。結果として、TLR3欠損マウスやTLR3阻害剤を投与したマウスではGISが軽度になることを見出した。TLR3がGISに寄与する機序を調べたところ、小腸陰窩の上皮細胞増殖領域では放射線による細胞死に加えて、TLR3依存的な細胞死が起きて、上皮構造破綻を増悪させていることが示唆された。本研究により、自然免疫を標的としたGISの新たな予防・治療戦略の開発が進むと期待される。
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