研究課題
本研究は、様々な磁性強誘電体においてレーザー光やマイクロ波の振動電場成分と誘電分極の相互作用を通じて励起される「電場誘起マグノン(エレクトロマグノン)」に由来する、新しい物性現象や物質機能の発見を目的としている。昨年度までの研究で、空間反転対称性の破れた絶縁性キラル磁性体で実現するスパイラル磁性や磁気スキルミオン結晶が、エレクトロマグノン励起の二種類の励起チャネル(電場励起と磁場励起)の干渉効果に由来する巨大なマイクロ波整流効果」を発現することを明らかにした。この研究をさらに発展させるために、この系における磁気スキルミオンの電気磁気結合に由来する基礎的な物理現象やデバイス機能を理論的に調べた。一つ目の大きな成果として、このような絶縁性キラル磁性体薄膜に針状電極を使って局所的に電場を印加することで、電気磁気結合を通じた局所磁化反転を実現し、スキルミオンを書き込めることを発見した。また、この現象が薄膜面の方位に対する強い依存性を示を見出し、その微視的機構を明らかにした。この成果を、Applied Physics Letters誌、およびAdvanced Electronic Materials誌に発表した。また、磁気スキルミオンに関する書籍やレビュー、語解説記事を執筆し、発表した。二つ目の大きな成果として、エレクトロマグノン励起を示すスパイラル磁性強誘電体の典型物質であるTbMnO3において、磁場印加により電気分極が90度フロップを起こす現象の微視的な物理機構を解明した。そして、従来は確率的に起こると考えられていたこの磁場誘起電気分極フロップが、多くの研究者の素朴な予想に反して決定論的に起こることを明らかにし、この手のスパイラル磁性マルチフェロイック物質のデバイス応用への道を切り拓いた。この成果を、Science誌およびPhysical Review B誌に発表した。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 8件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 3件、 招待講演 6件) 図書 (2件) 備考 (1件)
Physical Review Letters
巻: 114 ページ: 197203/1-5
10.1103/PhysRevLett.114.197203
Science
巻: 348 ページ: 1112-1115
10.1126/science.1260561
日本磁気学会報「まぐね」
巻: 10 ページ: 192-198
Applied Physics Letters
巻: 107 ページ: 082409/1-5
10.1063/1.492972
Nature Materials
巻: 14 ページ: 1116-1122
10.1038/nmat4402
Advanced Electronic Materials
巻: 1 ページ: 1500180/1-5
10.1002/aelm.201500180
Journal of Physics: Condensed Matter
巻: 27 ページ: 503001/1-24
10.1088/0953-8984/27/50/503001
Physical Review B
巻: 92 ページ: 224412/1-6
10.1103/PhysRevB.92.224412
(公社)日本磁気学会第205回研究会資料
巻: 205 ページ: 39-44
固体物理
巻: 51 ページ: 173-185
http://www.phys.aoyama.ac.jp/~mochizuki/index.html