これまでの研究から、線虫の示す飢餓と化学物質とを結びつけて記憶する学習(飢餓学習)には外界の化学物質を受容する感覚神経におけるインスリンシグナル伝達経路の働きが重要であることが示唆されていた。本研究により、線虫の感覚神経内の異なる部位(細胞体と軸索)では異なるインスリン経路が協調的に働き、それらの間のクロストークが記憶の形成に必要であることが明らかになった。学習記憶の異なる過程において働くインスリン様ペプチドの同定、シナプス部位において記憶の呼び出しに関わる可能性があるユビキチンシステムの同定により、学習記憶をダイナミックに制御するインスリン経路の制御機構の一端が明らかになった。
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