研究概要 |
22か所の研究協力施設により収集された日本人HBV患者群489検体、HBV既往感染者群335検体、健常者群467検体(計1,291検体)に対して、HLA-DPA1およびHLA-DPB1のHLAタイピングを実施した。また、日本人での解析結果と比較するため、韓国集団計586検体(HBV患者群340検体、HBV既往感染者群106検体、健常者群140検体)、香港集団計661検体(HBV患者群281検体、HBV既往感染者群190検体、健常者群190検体)、およびタイ集団計629検体(HBV患者群390検体、HBV既往感染者群113検体、健常者群126検体)でもHLAタイピングを実施した。 既報のHLA-DPB1*04:02(抵抗性)、DPB1*05:01(感受性)での有意な関連に加え、これまでに報告されていない2つの抵抗性アリル(DPB1*02:01, OR=0.71, P=2.1x10-3; DPB1*04:01, OR=0.34, P=2.38x10-5)と1つの感受性アリル(DPB1*09:01, OR=1.94, P=3.7x10-6)で新たに関連が示された。HLA-DPA1と-DPB1の組み合わせ(ハプロタイプ)でも関連解析を実施したが、特定のハプロタイプで関連が相加的に強まる事はなく、HLA-DPB1の特定のアリルが、HBV持続感染に対する感受性および抵抗性に重要である事が示唆された。また、韓国集団では日本集団と共通のアリルが感受性・抵抗性に関連する事が示され、香港集団およびタイ集団では、日本集団とは異なるアリルが関連する事が示された。 B型慢性肝炎患者の病態進展に関連するHLA-DPB1アリルを同定する為、B型慢性肝炎患者群及び無症候性キャリア群261検体と肝硬変及び肝癌患者群207検体で関連解析を実施した結果、HLA-DPB1*02:01を病態進展に関連するアリルとして同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度はHLAタイピングによるB型肝炎の慢性化に関与するHLAアリルの同定と、HLAアリル情報による層別化GWASを実施予定としていた。前半部分については、日本人検体を約1,300検体、外国人検体では約1,800検体についてHLA-DPA1およびHLA-DPB1のHLAタイピングを実施し、新規の関連アリルを同定した。まだ分子機構についての解析は行われていないが、当初予定していた慢性化への関連アリルのみならず、癌化に関連するアリルの同定を行ったことから、順調に解析が進んでいると言える。 また、HLAアリル情報を利用した層別化GWASの実施に必要なHLAアリル情報、病態に関連したHBV感染に起因した抗原・抗体に関する情報の蓄積、およびゲノムワイドSNPタイピングデータについて、現在病態に関連する臨床情報の整理を行っている最中であり、それ以外のHLAアリル情報およびゲノムワイドSNPタイピングデータについては既に揃っており解析に使用できる状態になっている。スケジュールの遅れはあるものの、おおむね予定通りに作業が進んでいると言える。
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