H26年度においては、H25年度までに開発した「可視光で駆動するBODIPYケージド化合物」の有効性を確認するべく、グルタミン酸、セロトニン誘導体等の種々の生理活性分子・神経伝達物質を導入したBODIPY誘導体を開発した。これらの誘導体はいずれも、500 nmの光照射依存的に生理活性分子を放出することを確認し、可視光で駆動する一連のケージド化合物の開発に成功した。同時に、BODIPYケージド化合物の光化学反応機構を精査するべく検討を行った。具体的には、電子供与体やBODIPY色素の電子密度を種々に変化させた一連の誘導体を合成開発し、アンケージ量子収率・蛍光量子収率・溶媒依存性を評価したところ、より高いアンケージ量子収率(光依存的結合開裂)で生理活性分子を放出し得る新たな候補骨格を得ることに成功した。 さらに、本研究で得られた知見を、より長波長の吸収蛍光特性を示すBODIPY誘導体に適用することで、長波長で機能する新たなケージド化合物の開発を試みた。具体的には、電子共役系を拡張したBODIPY誘導体に各種フェノール誘導体を導入した一連の誘導体を開発し、これらの光化学特性を精査した結果、光照射依存的なB-O結合の開裂が誘起されアンケージ反応が起こることを確認した。つまり、600 nm以上という長波長で生理活性分子を放出するケージド化合物の分子設計指針が確立されたことから、今後、長波長の光で駆動するケージド化合物を開発することで、生体深部で生理活性分子を添加できる光機能分子の開発が期待される。
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