研究課題/領域番号 |
25870186
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 剛介 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40648268)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヒストン / エピジェネティクス / 翻訳後修飾 / ペプチド合成 / ペプチド連結反応 |
研究概要 |
交付申請書に示したとおり本提案研究の目的は、DNAを核内にパッキングし、転写活性の制御を司る主要なタンパク質であるヒストンを人工的に作製することにより、エピジェネティクス研究進展のためのプラットフォームを開発することである。染色体の構成単位であるヌクレオソームを形成するヒストンタンパク質はH2A、H2B、H3、H4の4種類が存在し、それぞれが2種類ずつ会合し8量体を形成している。これらヒストンタンパク質は、様々な翻訳後修飾を受けることで染色体構造を変化させ、細胞の挙動を指揮することができる。この翻訳後修飾を研究するにあたって、修飾されたヒストンを手に入れる必要があるが、タンパク質取得の常法である大腸菌による発現では、このような修飾タンパク質を取得することは困難である。そこで、我々は化学的手法を用いてヒストンタンパク質を合成することを目標として研究を行った。その手法として、目的タンパク質のアミノ酸配列を断片化し、それぞれのペプチド断片をペプチド固相合成により取得後、Native Chemical Ligation法を用いて連結させる手法を選択した。 今年度は、ヒストンH2AおよびH2B、H4のペプチド断片の合成および、全長H2Aの合成に成功した。また、N末端に蛍光色素を導入した全長H2Aの合成も達成し、その蛍光標識H2Aの生細胞イメージング実験も行った。化学的にヒストンH2Aを全合成したのは世界初であり、今後翻訳後修飾を導入したH2Aを合成することで、エピジェネティクス研究の進展が見込まれる。また、合成ヒストンがHeLa細胞に取り込まれることも明らかにし、これまでGFPとの融合タンパク質としてしか観察できなかったヒストンの細胞内挙動をより精密に研究できるツールとしての応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標的タンパク質の一つである、ヒストンH2Aの化学的全合成に成功したため。また、H2A以外のH4、H2Bに関しても各ペプチド断片の合成に成功したため。また、当初の計画には述べていなかったが、蛍光標識したH2Aを用いて生細胞内イメージング実験により、ヒストンH2Aの細胞内挙動について知見を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度は、引き続きヒストンH2BとH4の全長タンパク質の合成を行っていく。H3に関しても余裕ができ次第、合成を開始する予定である。また、これらのヒストンを合成する際に、研究対象となる翻訳後修飾をあらかじめ決定し、翻訳後修飾が導入されたヒストンを一気に作る予定である。4種類のヒストン合成が完了したら、ヒストンオクタマーを形成させ、601DNAとヌクレオソーム構造を形成させた後、翻訳後修飾がヌクレオソームの安定性に与える影響を調べる予定である。 また、当初予定していた無細胞翻訳系を用いたヒストンの作製についても、系の準備をしていきたいと考えている。
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