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2015 年度 実績報告書

中国大興安嶺における生業環境の変化とトナカイ飼養民の適応形態:1940-2010

研究課題

研究課題/領域番号 25870187
研究機関国立民族学博物館

研究代表者

卯田 宗平  国立民族学博物館, 先端人類科学研究部, 准教授 (40605838)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード地域研究 / 生態・環境 / 中国 / 環境変化 / 大興安嶺
研究実績の概要

本年度の研究目的は、中国大興安嶺でトナカイ飼養を続けるエヴェンキ族らを対象に、彼らがトナカイの角生産に専業化する過程でいかに技術的な対応をしたのかをより具体的に明らかにすることである。調査の結果、角生産の専業化のなかで「仔トナカイへの人為的な介入」と「繁殖期に未去勢オスから仔トナカイを守る」という二つの技術が重要であることがわかった。前者は、角を採取する際に人間が接近しても恐れない馴化個体をつくるための技術である。この技術は、①母トナカイをキャンプ地の近くで出産させ、②母トナカイのまわりにいる仔トナカイを捕まえて首紐をつける。そして、③仔トナカイを繋ぎ止め、母トナカイを放ち、しばらくして戻ってきた母トナカイを捕まえて仔トナカイを放つ。この時期、母子をキャンプ地周辺で捕まえては放つ作業を繰り返すことで「人間に触れうる親和性」を確立させようとするのである。もうひとつ重要な技術は「繁殖期に未去勢オスから仔トナカイを守る」ことである。かつてエヴェンキ族らは数頭の種オスを残してすべて去勢していた。その後、角生産の専業化を進めるなかでオスの去勢をすべて止めた。これは、オスを去勢すると角のサイズが小さくなり、商品価値が下がるからである。しかし、オスの去勢を止めると繁殖期に群れ管理が難しくなる。こうしたなか、彼らはトナカイが繁殖期を迎える前の8月下旬にカラマツを切り倒し,それを組み合わせて大きな柵をつくり、そのまわりに格子状の鉄線を張りめぐらす。そして、繁殖期になると夜間に仔トナカイを柵に入れることで攻撃的になった未去勢オスから守るのである。柵を使用した仔トナカイの保護は10月初めまで行われる。このようにエヴェンキ族らは、角生産に専業化するなかで、仔トナカイへの人為的な介入と保護という働きかけをおこない、彼らにとって「生業の対象」となったトナカイの個体数を増やしていたことが明らかになった。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち謝辞記載あり 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 鵜飼い漁誕生の初期条件 -野生ウミウを飼い馴らす技術の事例から2016

    • 著者名/発表者名
      卯田宗平
    • 雑誌名

      日本民俗学

      巻: 286 ページ: 未定

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 「ポスト「北方の三位一体」時代の中国エヴェンキ族の生業適応-大興安嶺におけるトナカイ飼養の事例」2015

    • 著者名/発表者名
      卯田宗平
    • 雑誌名

      アジアの生態危機と持続可能性-フィールドからのサスティナビリティ論

      巻: 616 ページ: 73-108

    • 謝辞記載あり
  • [学会発表] トナカイ角の商品化と馴化技術の展開 -中国大興安嶺のエヴェンキ族らの事例から2016

    • 著者名/発表者名
      卯田宗平
    • 学会等名
      日本文化人類学会
    • 発表場所
      南山大学
    • 年月日
      2016-05-28 – 2016-05-29
  • [学会発表] 中国鵜飼い探訪記-消えゆく前にみてみよう2016

    • 著者名/発表者名
      卯田宗平
    • 学会等名
      第23回カレッジシアター「地球探究紀行」
    • 発表場所
      あべのハルカス近鉄本店
    • 年月日
      2016-03-09
    • 招待講演
  • [備考] 国立民族学博物館のスタッフページ

    • URL

      http://www.minpaku.ac.jp/research/activity/organization/staff/uda/index

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公開日: 2017-01-06  

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