研究課題/領域番号 |
25870193
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 達 東京大学, 物性研究所, 助教 (50554705)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 酸化物半導体 / キャリアダイナミクス / 時間分解光電子分光 / 光触媒 |
研究概要 |
本研究は光触媒として重要な酸化物半導体表面における光励起キャリアのダイナミクスを、超短レーザーパルスと軟X線パルスを組み合わせた時間分解X線光電子分光システムを用いて解明することを目的とする。半導体にバンドギャップよりも大きいエネルギーの光を照射すると、表面光起電力効果により表面近傍のポテンシャル勾配が変化する。この表面光起電力効果の緩和過程を内殻準位のX線光電子スペクトルを用いてリアルタイムで観測することで、光励起キャリアの緩和過程について情報を得ることができる。このシステムは50ピコ秒の時間分解能でピコ~ミリ秒の幅広い時間で時間分解X線光電子分光測定が可能である。 研究開始年度の本年度は、SrTiO3清浄表面における光励起キャリアの緩和ダイナミクスを時間分解X線光電子分光法により調べた。SrTiO3表面に超短パルスレーザーを照射すると、表面光起電力効果によりSrTiO3基板のSr3d内殻準位がピークシフトすることを発見した。更に、この表面光起電力効果は1ナノ秒で緩和することを観測することに成功した。この1ナノ秒というSrTiO3表面における緩和時間は、ZnO, TiO2などの他の酸化物において時間分解X線光電子分光法により明らかになった数十から数百ナノ秒の緩和時間と比較して非常に短い。現在、各酸化物表面に存在するポテンシャル勾配の違いから表面光起電力効果の緩和時間の違いを説明することを試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標であったSrTiO3清浄表面における表面光起電力効果の観測及びその緩和時間の測定に成功したため、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
光触媒における反応サイトとして重要な金属助触媒を真空中で担持するため、金属蒸着源の作成を行う。蒸着レート等の条件出しを行うと共に、走査トンネル顕微鏡STMを用いて、蒸着した金属の表面モルフォロジーを評価する。その後、本研究の目標である、酸化物半導体・金属界面における光電子分光の元素選択性を活かしたサイト選択的な表面キャリアダイナミクス観測を実現する。 また、酸化物半導体表面における光励起キャリアの緩和時間が励起光の波長に対してどのような依存性を示すのかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に当初導入予定であった連続光照射用レーザーを別予算で購入することが可能になったため。 光励起キャリアの緩和時間の励起光の波長依存性を調べるため、レーザー用非線形結晶の購入に予算を使用する予定である。実際の測定の効率化を図るために真空部品及びレーザー光学系を改善・修繕できるよう、これらの消耗品に予算を使用する予定である。また、得られた研究成果を国内外の学会で積極的に発表するため、旅費に予算を使用する予定である。
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