研究課題/領域番号 |
25870194
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
大石 太郎 福岡工業大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (80565424)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 輸入水産物 / 消費者意識 / エコラベル |
研究実績の概要 |
第一に、日本への輸入水産物としてその潜在的な重要性から対象魚種に特定したベトナム産バサについて、前年度はWebアンケート調査を通じたコンジョイント分析により消費者意識の分析を行った結果、バサは嗜好性の強いぜいたく品については我が国ではニーズが低いことが示されたが、その研究内容を本年度の研究成果の一部として著書『グリーンコンシューマリズムの経済分析』(2015年4月出版)の1章分の中にまとめた。
第二に、前年度は、様々な輸入水産物に対する消費者の多様な意識を包括的に分析するために消費者の回転寿司における選択行動についてアンケート調査分析を行った。その結果、資源の減少を懸念している消費者ほどウナギ、マグロなど資源枯渇が報道されている魚種を多く食べるという相関が見られ、資源枯渇に関する情報提供を行うだけでは問題が解決しない可能性が明らかとなった。こうした結果について、本年度、北米漁業経済学会(NAAFE)アラスカ大会において国際学会報告を行った。なお本学会で得た学会動向は『水産経済新聞』への記事に執筆・掲載し、国内へのフィードバックも行った。
第三に、本年度にマルタ共和国で開催されたSeaweb Seafood Summitに参加し、世界各国における水産物の情報の非対称性に関する研究動向の情報収集を行った。水産エコラベルの普及について、海外では水産資源に依存している水産加工業者が積極的に普及に向けたCSR活動を率先して行っている他、環境NPOや財団の活動がそれを支える上で重要な役割を果たしていること、等が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
調査を進めている中で、当初の計画では想定していなかったアイデア(回転寿司での選択行動を観察することで消費者の様々な輸入水産物への意識を包括的に分析できる可能性)を見出すことができ、このアイデアも採り入れて研究を進めることが出来ている。また、本研究の問題意識の1つである日本人の魚離れの要因について、輸入水産物伊賀の観点からも明らかにすることを目的に食の欧米化の分析を行い、そうした魚離れに対する水産庁のファストフィッシュ政策についてその意義と課題を分析することで、当初想定したよりも広い視野に立った研究を実現できている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの回転寿司における消費者の選択行動の分析では輸入魚を含む様々な魚種に対する消費者意識の分析を行うことができたが、アンケート上の分析であり実際の消費者行動と異なる点が課題として挙げられる。そこで、本年度は、消費者に実際に回転寿司屋で食事を行ってもらいその行動を観察するといった経済実験の可能性を検討したい。またこれまでの研究成果を学会発表および論文執筆にて広く社会に公表することを目的としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
過年度に回転寿司における消費者の選択行動をアンケートではなく実際の観察に基づき分析することが必要であると考え計画を立てると同時に、次年度にその研究を実施するための予算を残すことが必要であったため。またこれまでの研究成果を最終年度に海外に向けて成果報告する必要があるため。
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次年度使用額の使用計画 |
回転寿司における消費者行動を実際に観察するための経済実験を行う。また、国際漁業経済学会(IIFET)において成果の一部を発表する。
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