最終年度は、過年度に取り組んだ研究について国際学会発表、国際誌および国内図書への掲載の形で研究成果の公表を行った。最終年度に取り組んだ研究成果については今後も成果の公表を行っていく予定である。 本研究では、研究期間全体を通じて、輸入水産物に対する消費者の意識と現実の間の情報の非対称と、その非対称を緩和するための環境ラベル等の制度の役割について分析した。ベトナム産のバサなどの輸入魚を対象に分析し情報の非対称性の存在と環境ラベルの役割が明らかにされた他、特筆すべき成果として以下の点が明らかにされた。第一に、2013年に輸入エビ(ブラックタイガーエビ)と国産エビ(クルマエビ)に関する食品偽装が社会問題となったが、消費者が味や外見を識別することが困難であるほど類似しており健康問題も生じていないこれらの財についてどのような情報の乖離が問題になったのかをアンケート調査とテキストマイニング分析で解析したところ、クルマエビは正月などのハレの日に、ブラックタイガーエビは毎日の生活の中で消費するといった区別が存在することが明らかになり、現実の商品のクオリティには大きな差がなくても文化的な意味での情報に違いがあることで価値が大きく異なる場合があることが明らかになった。また回転寿司の消費者行動を分析することで、資源の枯渇を懸念している消費者ほどウナギやマグロといった資源の枯渇が指摘されている魚種を多く食べる傾向があるという相関関係が明らかにされ、資源が減っているという情報はその魚種を将来食べれなくなる可能性があることから現在の消費をかえって高める可能性もあることが示唆され、資源枯渇の情報提供だけでは問題が解決しない可能性が明らかになった。このように当初想定していた研究内容から波及した研究成果が多く得られた。
|