研究概要 |
永久歯の抜歯原因調査によると抜歯の原因として歯の破折が約11%を占めると報告された。歯根破折の診断は難しく、破折の診断を下せたとしても予知性の高い治療法は存在せず、多くの場合抜歯を第一選択とする。抜歯の原因の11%つまり歯根破折は医原的に発生した可能性が考えられる。本研究ではEr:YAGレーザーと超音波を用いた際の象牙質の歪とマイクロクラック発生の影響を検討した。40本の歯根象牙質を用い,歯冠部を除去した後歯根長を9mmに調整し、歯根端を3mm除去した。その後、根管形成をMAF25あるいは80として、 Gates-Glidden drills と Kファイルを用いてステップバック法にて行った。その後側方加圧充填法にてガッタパーチャとシーラー(Sealapex, Sybron Endo, USA)を用いて 根管充填を行った。歯根象牙質の歪はストレインゲージ(共和電業)を歯根3分の1の部位に固着した。逆根管窩洞形成はEr:YAGレーザー(Erwin AdvErL, 140 mJ 10 pps)または超音波(Piezon Master 400, EMS, Switzerland, 最大設定値)を注水下にて行った。逆根管窩洞形成後、歯根象牙質表面の歯根破折の有無を顕微鏡下にて観察を行った。 根管形成の根尖径を♯25としたとき、歯根象牙質に与える象牙質の歪はEr:YAGレーザー群は超音波群に比較して有意に小さい結果となった。またEr:YAGレーザー群は根管径のサイズによらず象牙質の歪に有意差は認められなかったものの、超音波群は♯25で形成した群は♯80で形成した群に比較して有意に大きな象牙質の歪を生じていた。顕微鏡観察では超音波群のみに微小亀裂を認めた。形成された最終的な根管径が小さい場合、Er:YAGレーザー群では超音波群と比較して有意に小さな象牙質の歪を生じていた。
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