研究課題/領域番号 |
25870195
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
渡辺 聡 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50549938)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歯根破折 / マイクロクラック / Er:YAGレーザー / 象牙質の歪 |
研究実績の概要 |
歯科治療において歯根の破折が注目されており、8020推進財団により平成17年に報告された永久歯の抜歯原因調査によると抜歯の原因として歯の破折が約11%(う蝕30%、歯周病40%)を占めると報告された1)。また歯根破折の診断は難しく、もし破折の診断を下せたとしても予知性の高い治療法は存在せず、多くの場合抜歯を第一選択とする。抜歯の原因の70%はう蝕および歯周疾患によるもので、ある程度患者側に責任がある。しかし抜歯の原因の11%つまり歯根破折は歯科治療による原因すなわち医原的に発生した可能性が考えられる。今後歯科治療の向かうべきは今までのように効率化の方向のみではなく破折を起こさない治療体系を考えることが歯科治療の本質の方向である。つまり現実の臨床では治療せざるを得ない歯牙に対し破折の発生を最小限にし、可能な限り治療器材を安全に使用する必要がある。また近年外科的歯内療法に応用可能な湾曲型チップが開発された。本研究ではEr:YAGレーザーおよび湾曲型チップと超音波を用いた際の象牙質に与える歪について検討した。30本のヒト単根抜去歯を歯根長11 mmに歯冠を切断,通法通り根管形成および根管充填後,根尖部3 mmを切断し,逆根管充填窩洞形成を注水下Er:YAGレーザー照射(出力: 140 mJ 10 pps,以下ERW) 群,注水下超音波(出力: 最大設定値,以下USW)群,非注水下超音波(同値,以下US)群にて行った(n=10)。またCCDカメラ(VH-8000,キーエンス、倍率80倍)およびマイクロフォーカスX線CT(SMX90CT、島津製作所)にて形成前後、破折試験後の試料表面および内部の破折線の有無、状態を確認した。根尖切除面の破折線と歯根象牙質内部の破折線を併せた,逆根管充填窩洞形成後の破折線数(破折線の重複を除く)は,USW群(14本)およびUS群(39本)がERW,CNT群(0本)に比較して統計学的に有意に多かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに2回の国内発表および海外における5回の学会発表を行い、1本の国内紙および、2本の英文誌の原著論文が完成、発行されている。実験は再現性が高く、クリアーである。この基礎的な結果は臨床応用にあたって、従来の治療法に秘かっくして良好な結果を得られる可能性を有している。したがって当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
先行研究における歪に関する実験はストレインゲージの大きさの都合上全て歯根表面の歪を測定していた。つまり根管に作用された歪が象牙質の粘弾性等によって緩和された結果の一部を測定していると考えられる。一部の測定においても大きな歪よりは小さな歪であるほうが歯根破折の影響は少ないと考えられるが、歯根内部の歪や分子レベルでのマイクロクラックについてもより詳細に測定するべきである。またハイスピードカメラを用いたマイクロクラック観察や歪を検討することは今までの材料学の研究では散見されるが、歯学においてはほとんど報告がない。今後ハイスピードカメラおよび顕微鏡レンズを用いてマイクロクラックが起こる瞬間を観察し、新しい知見が確認できるか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定よりも研究が進行し、2月5日からの米国パームスプリングにて講演を依頼され旅費が必要となり、前倒し請求を申請したが、宿泊費、渡航費を思いのほか節約できたため次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
現在一連の研究が順調であり、次年度にハイスピードカメラ関連機材を購入する。ハイスピードカメラを用いたマイクロクラック観察や歪を検討することは今までの材料学の研究では散見されるが、歯学においてはほとんど報告がない。今後ハイスピードカメラおよび顕微鏡レンズを用いてマイクロクラックが起こる瞬間を観察し、新しい知見が確認できるか検討する予定である。
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