歯根破折の診断は難しく、もし破折の診断を下せたとしても予知性の高い治療法は存在せず、多くの場合抜歯を第一選択とする。今後歯内療法の向かうべきはその効率化のみではなく破折等を起こさない生体にやさしい治療体系を考えることが歯内療法学の本質の方向である。本研究ではレーザーを用いた切削と回転切削器具や超音波による切削と歯根破折等へ与える影響、生体への安全性を検討した。 今年度はレーザー照射装置の応用の可能性を探索するため、Er:YAGレーザーを外科的歯内療法に応用し感染除去を行い、治癒の得られた症例を国内学会にて報告を行った。 またより安全な根管治療における洗浄方法としてLAIの安全性を物理学的見地から検討した。根尖孔外の圧力の測定について、シリンジを用いた根管洗浄、超音波根管洗浄、Er:YAGレーザーを用いた根管洗浄、半導体レーザーを用いた根管洗浄の4群に対し実験を行い、比較した。結果、超音波根管洗浄、Er:YAGレーザーを用いた根管洗浄、半導体レーザーを用いた根管洗浄における根尖孔外に生じる圧力は、従来のシリンジを用いた根管洗浄に比べ有意に低かった。LAIによる根尖孔外への根管洗浄液の溢出の可能性はあるものの、LAIは従来のシリンジを用いた根管洗浄と比較して相対的に安全性が高く、Er:YAGレーザーおよび半導体レーザーを応用した根管洗浄は将来的に有望であると考えられる。また波長810nm半導体レーザー、波長980nm半導体レーザーを用い、異なる条件下の4群に対し実験を行い、比較した。その結果、特定の条件下で波長980nm半導体レーザーを用いた照射において,波長810nm半導体レーザー照射よりも大きな蒸気泡が数多く観察された。また電子顕微鏡下レーザーによる根管壁のクラック等の発生は認めなかった。
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