研究概要 |
大動脈瘤罹患患者をはじめとして、多くの循環器疾患患者の医科学的検査、および歯科学的検査を行った。歯科学的検査に関しては、ELISA法による末梢血中の歯周病原細菌に対する抗体価測定と、PCR法による口腔内サンプルからの歯周病原細菌遺伝子の同定を行った。対象とした細菌種は、P. gingivalis, A. actinomycetemcomitans, P. intermediaとした。その後、データの解析を行い、現在も解析を継続中である。 これまでの結果として、腹部大動脈瘤患者ではそうではない被験者と比較して一般的な臨床的歯周病検査値である歯周ポケット深さが悪化していることが認められた。その一方で、P. gingivalis, A. actinomycetemcomitans, P. intermediaとも、口腔内の唾液サンプル、歯肉縁下のプラークサンプルにおいて両群での差を認めなかった。また、大動脈瘤を併発しやすいマルファン症候群患者における歯周病罹患状態を調査したところ、マルファン症候群患者ではP. intermediaに対する抗体価が低いことが明らかになった。 歯周病原細菌に対する抗体価に関しては、歯周病に対して保護的に働くのか、あるいは炎症の惹起という点で促進的に働くのか、いまだコンセンサスは得られていない。しかしながら、歯周病の全身への影響という観点で考えたとき、細菌感染とともに抗体価産生は重要な指標となりうると考えられている。 本研究結果は、歯周病が全身に与える影響とそのメカニズムの解明に向けたデータのひとつとなると考えられる。
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