研究課題
本研究では,無脊椎動物由来の巨大ヘモグロビンに酸素が協同的に結合する過程の中間状態をとらえ,これを逐次的に構造決定する.これにより,酸素が結合していく過程に伴う巨大ヘモグロビンの構造変化の経路を,はじめて実験的に明らかにすることを目的とする.平成26年度は以下の通り研究を実施した.1.サツマハオリムシV2ヘモグロビンのoxy-deoxy中間状態の結晶構造解析前年度に引き続き、サツマハオリムシ由来V2ヘモグロビンのoxy型結晶を用い,dithioniteを加えた溶液に浸漬させることで,結晶状態を保ったままdeoxy型へ至る中間状態の結晶を多数作製した.これらの結晶を用いて国内の放射光施設においてX線回折データを取得し、得られた構造を詳細に比較した。期間全体を通して得られた各種のoxy-deoxy中間状態のうち、酸素分子の解離している割合が少ない結晶では、V2ヘモグロビンの四次構造はいずれもoxy型に非常に近いものであることがわかり,巨大ヘモグロビンではすべてのグロビン鎖から酸素分子が解離する直前まで,oxy型の四次構造を取りやすいことが示された。2.顕微分光によるoxy-deoxy中間状態結晶のスペクトル測定本研究で作製した結晶について、顕微分光法による結晶の吸収スペクトル測定を行った。本研究の手法により得られた結晶がoxy-deoxy中間状態に相当するスペクトルを示すことを確認し、X線結晶構造解析による電子密度から結論されたoxy-deoxy中間状態と矛盾しないことを確かめた。
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Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr.
巻: 70 ページ: 1823-1831
10.1107/S1399004714008475