研究課題
若手研究(B)
長管骨が太く短く、肘・膝関節形成不全を示すFgf9ミスセンス変異マウスEksの骨格異常がどのような細胞、分子メカニズムで発症するのかを解明することで、FGFシグナルが関与する骨・関節形成機構を明らかにすることを目的とした。平成25年度は、1.肘関節位置決定に関与する因子の探索、2.膝関節内構成体形成機構について解析した。1.肘関節位置決定に関与する因子の探索について、肘関節異常発症時期のEksホモマウス前肢芽と正常マウス前肢芽について、肘関節予定部位をDNAマイクロアレイに供し、遺伝子発現を比較することで、肘関節位置決定に関わると予想される候補因子を抽出した。2.膝関節内構成体形成機構について、まず、正常マウスの膝関節は、胎齢14.5日頃に、大腿骨と脛骨の間の細胞群から半月板と十字靭帯の分化が始まり、十字靭帯の分化形成が進んだ後、胎齢16.5日頃に、細胞死により膝関節腔が形成されることを明らかにした。胎齢16.5日Eksホモマウスは、半月板、十字靭帯、膝関節腔予定領域がともに形成されず、本来の膝関節領域全体が一様に軟骨細胞に置き換わっていた。胎齢16.5日Eksヘテロマウス膝関節では、半月板は形成されていたが、十字靭帯は靭帯様の細胞集団は認められたものの十字の正しい形状を形成していなかった。また、膝関節腔予定領域の狭窄が観察された。Eksヘテロマウスは、膝関節予定領域における異所的なFGF9シグナルにより、十字靭帯領域と膝関節腔領域の区画化が不明瞭になり、各々の分化も障害されていることが分かった。更に、本来の膝関節腔予定部位で細胞死が著しく減少したために膝関節腔が狭窄していることが分かった。本年度の研究結果より、適正なFGFシグナル制御が、肘及び膝関節の形成に必要であることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りに、肘関節位置決定に関わると予想される候補因子を抽出できたため。また、膝関節内構成体の形態形成にFGFシグナルが関与していることを示すことができたため。
今後は、DNAマイクロアレイで抽出した肘関節位置決定に関わると予想される候補因子について、Eksホモマウスと正常マウスの前肢芽組織内での発現をRNA in situ hybridization法及び抗体染色法で比較し、肘関節位置決定に関わるFGFシグナル伝達とそのシグナルネットワークを明らかにする。膝関節内構成体形成機構については、十字靭帯領域と関節腔予定領域を区分する分子機構についてFGFシグナル伝達に着目しながら解析する。また、関節腔予定領域で細胞死を誘導する分子機構の解明を目指す。更に、新たに、長管骨の長さ、太さの制御機構について、軟骨膜及びFGFシグナリングに着目して解析する。
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巻: 21 ページ: 990-997
10.1038/cdd.2014.21.
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巻: Nov 21 ページ: 印刷中
10.1007/s00276-013-1228-8