研究課題/領域番号 |
25870204
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
大野 由夏 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (70451961)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | CPM / DNIC / 慢性疼痛患者 / 定量的疼痛評価 / 疼痛コントロール |
研究概要 |
ヒトには内因性に痛みを抑制する仕組みが備わっている。そのひとつが「痛みが痛みを抑える現象」、すなわち条件刺激性疼痛調節(Conditioned Pain Modulation:CPM)、またの名は広範囲侵害抑制性調節(Diffuse Noxious Inhibitory Controls: DNIC)である。CPMの評価方法として様々な試験法が提唱されているが、いまだ確立された評価法はない。また、CPMにはカテコラミンの関与が示唆されており、CPMの評価は疼痛治療に応用できる可能性があるが、そのメカニズムはいまだ明らかではない。 われわれはこれまで、健康なヒトにおいて炭酸ガスレーザーの刺激によりCPMが生じることを示してきた。また、CPMの評価にはさまざまな試験法があるが、圧痛覚閾値がCPMの評価法として最も適していることを示し、大きな反響を得た。 今回われわれは、より信頼性の高いCPM評価を行うため、定量的に圧痛覚閾値を測定することが可能な機械を開発した。開発した圧痛覚閾値測定器を用いて健康成人を対象にCPMを評価したところ、炭酸ガスレーザー刺激により圧痛覚閾値が上昇した。すなわち、開発した圧痛覚閾値測定器によりCPMが評価できることを確認した。 また、顎関節症による慢性疼痛をもつ患者と健康成人を対象としてCPMを測定した。その結果、健康成人ではCPMを認めるが、顎関節症による慢性疼痛を認める患者では健康成人のように痛みの抑制が生じず、CPMに変調が生じていることを明らかにした。本研究結果は、CPMが疼痛修飾のバイオマーカーとして利用可能であることを示唆する、意義ある研究結果である。 今後は、慢性疼痛患者を対象として圧痛覚測定器をもちいてCPMの変化を評価し、CPMにおけるカテコラミンの関与を明らかにしていくことにより、各個人に対応した疼痛治療、すなわち痛みのテーラーメード治療法の開発を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の目標に沿って、まずは定量的圧痛覚測定器を開発した。開発した圧痛覚測定器をもちいて健康被健者を対象にCPMを評価した。炭酸ガスレーザー刺激により圧痛覚閾値が上昇すること、すなわち健康被健者ではCPMが生じ、開発した圧痛覚測定器を用いてCPMが評価可能であることを確認した。 また、慢性疼痛患者を対象としてCPMを測定し、慢性疼痛患者では健康成人と比較してCPMが減弱していることを示した。 以上より、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
慢性疼痛患者を対象として、われわれが開発した圧痛覚閾値測定器をもちいて疼痛修飾を確認する。カテコラミンが疼痛修飾にどのように影響を与えるか、CPMをバイオマーカーとして疼痛修飾の評価を行い、各個人に対応した疼痛治療への応用をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、カテコラミンの測定方法の詳細について検討を行っていたため、実測定には至らず、計上していた経費を使用しなかった。 来年度は、検討結果を反映する形でカテコラミンの測定を行い、昨年度分に計上した予算も用いて研究を継続する予定である。
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