研究実施計画に記載したとおり,2年目では,本研究で開発したシステムを実際の協調学習場面に適用し,システムが協調学習を支援できているかどうかについて評価を行った.さらに,初年度に引き続き,コンピュータによる学習支援の効果の調査,実際の教育現場におけるコンピュータ利用の影響調査を実施し,協調学習支援システムの開発に活かした. 既存の協調学習支援システムでは「学習者が支援専用のディスプレイを注視してしまう」,「いずれのシステムも個々の参加者への支援内容が全体に伝わる」仕組みになっていた.そのため,本研究では,この2つの問題点を解決する「アンビエントな会話を支援」するシステムを開発し,既存研究における支援手法と比較した.その結果,(1) 個々の参加者への支援内容を全体に通知する手法,および支援内容を個人のみに通知する手法は,支援がない場合よりも発話数が多い傾向があった.また,(2) 平均発話時間については,支援内容を全体に通知する手法が他よりも有意に短かった.さらに,(3) 同時発話率については,支援内容を全体に通知する手法が他よりも大きい傾向があった.これらの結果は,参加者への支援方法の違いが原因となっている可能性があり,開発したシステムがアンビエントな会話支援を達成できた可能性が高い.以上から,本研究の目的であった,「学習者同士の対話状況に注目した協調学習支援システムの開発およびそれによる効果的な支援」はおおよそ達成できたと考えている.これらの結果については,最終年度終了時点で論文にまとめている最中である.そのため,近く学会等で発表する予定である.
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