研究課題/領域番号 |
25870213
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
中野 幸司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (70345099)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 重合触媒 / 開環重合 / 二酸化炭素 / エポキシド / ラクトン |
研究概要 |
本研究では,エポキシドと二酸化炭素との交互共重合や環状エーテル・環状エステルなどの開環重合を取り上げ,それらの重合に向けた高性能金属重合触媒の開発を目的とする.特に,「重合進行の核となる金属錯体」と「重合進行を補助する機能部位」とを同一分子内に連結し,金属錯体と機能部位との協働作用を利用した高効率重合触媒を開発する. (1)金属錯体間の協働作用を利用した触媒設計:リンカーの構造及び金属中心の数が触媒活性に及ぼす影響を明らかにするために,リンカーとして剛直なベンゼン環を導入した二核および三核コバルト錯体を設計し,その合成に成功した.これらの二核および三核コバルト錯体をもちいてプロピレンオキシドと二酸化炭素との交互共重合をおこなうと,重合進行は進行したが,単核錯体と同等の触媒活性であることがわかった. (2)金属錯体-有機機能部位間の協働作用を利用した触媒設計:配位によるモノマー活性化と,成長末端の求核攻撃による活性化モノマーの開環,という過程を制御することを目的に,モノマーの活性化を担う金属錯体(コバルトサレン錯体)と,成長末端の活性化を担う塩基(1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-eneなど)を共存させて,ラクチドの開環重合をおこなった.その結果,塩基のみ,もしくは金属錯体のみでは重合が進行しなかったが,金属錯体と塩基を両方もちいたときに重合が進行することが明らかとなった.これは,金属錯体と塩基との協働作用を利用した触媒開発に関する重要な知見である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)本研究では,複核金属錯体に基づく触媒設計に関して,中心金属の数・種類が重合活性に及ぼす影響を明らかにすることを目的の一つとしている.今回,新規二核および三核錯体を設計・合成したが,単核錯体と同等の触媒活性であった.一方,この結果は,リンカーのフレキシビリティが重要という触媒設計指針を示唆するものである. (2)当初の計画通り,金属錯体と有機塩基との協働作用による重合触媒を開発することができた.また,この知見を次年度以降に展開することで,触媒活性の飛躍的な向上が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
(1)金属錯体間の協働作用を利用した触媒設計:25年度に合成した剛直なベンゼン環をリンカーとした複核錯体では,金属間の距離が適切ではなかったことが考えられる.そこで,ベンゼン環と金属錯体間にフレキシブルなリンカーをもちいることや,剛直なベンゼン環を含まないリンカーをもちいることで,金属間距離とフレキシビリティを制御した複核金属錯体を設計・合成し,その触媒活性を明らかにする.合成した複核金属錯体に関しては,エポキシドと二酸化炭素との共重合に加えて,他のモノマー(ラクチド,ラクトン,エポキシド)の開環重合に適用し,その特性を明らかにする. (2)金属錯体-有機機能部位間の協働作用を利用した触媒設計:25年度の検討で,金属錯体と有機塩基との協働触媒効果が確認できた.この成果に基づき,この有機塩基を導入した新規金属錯体を設計・合成し,その触媒活性を明らかにする.なお,金属と有機塩基との距離,すなわちリンカーの長さが大きく影響すると予想されるため,そのリンカーの長さが触媒活性に及ぼす影響を明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
学会発表のための旅費を計上していたが,他の経費から支出したため. 26年度に請求した助成金と合わせて,主に,物品費(有機合成化学用試薬・HPLC用ポンプ),旅費(成果発表),その他(学内機器利用料)にあてる.
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