研究課題/領域番号 |
25870215
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
成田 麗奈 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (30610282)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フランス音楽 / 現代音楽 / 音楽史書 |
研究概要 |
研究計画に従い、H25年度は先行研究の整理や一時資料のリストアップを行い、1870-1945年間を①1870-1890年、②1891-1913年、③1914-1929年、④1930-1945年の4期に分け、音楽史書のデータベースを作成した。 本年度はこのうちの③期に焦点を当て、事例研究としてポール・ランドルミーの音楽史書に焦点を当てて研究を行った。ランドルミーは自身の音楽史講義の経験をふまえ、1910年に『音楽史』を出版した。1910年版においてはドビュッシーの創作活動までが取り扱われている。1923年改訂版においては全体の章構成も大幅に組み替えられ、「現代音楽」の章があらたに追加された。この章において、ランドルミーはフランス音楽の優位性を強調し、「全世界の音楽国民のなかで第一等にあるのがフランス楽派である」と結論づけている。さらには、第二次世界大戦期に改訂された1942年版においては、「1940年に存命のフランスの作曲家」という項目があらたに追加され、フランスの才能ある作曲家の数的優位性が強調されている。 こうしたフランス音楽の優位性は、1942年に刊行された『フランス音楽』においてより一層明確に展開される。全3巻から成る本書は、第2巻までは年代順にフランスの作曲家を記述する形をとっているが、第3巻『ドビュッシー以降』においては、大胆にも六人組を中心に据えた章構成を行っている。これによって、ドビュッシー以降のフランス音楽における六人組の重要性をアピールすると同時に、彼らに影響を与えた要素としてジャズやストラヴィンスキー、シェーンベルク等に紙幅を割くことで、フランス音楽の国際性・多様性を浮かび上がらせ、音楽文化の中心地としてのパリを描き出そうという意図が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では③期のみの音楽史書をリストアップする予定だったが、今後全期について基礎的な調査を行うことができた。フランスにおいては音楽理論書および音楽事典が歴史記述としての役割を果たしており、様式史あるいは作曲家列伝としての音楽史書刊行はドイツの後塵を拝し、ロマン・ロランが述べるようにアマチュア向けの書物として扱われることが多かった。だが、普仏戦争の敗戦後、学術的な書物としての音楽史書刊行の機運が高まり、学術的な音楽史書が編まれるようになった。とりわけ「現代音楽」の項目は、フランス音楽を歴史的に正当化するうえで、重要な位置を占めてゆくことが確認された。 ③期の音楽史書の事例研究としてランドルミーの音楽史書を取り上げ、現在論文投稿の準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はリストアップした音楽史書のデータベースを元に現物調査を進め、①②④期について詳細な調査を行い、フランスにおいて音楽史記述の基礎がどのように形成されたのかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の調査範囲が3期分にわたり、購入が必要な書籍が増えることが見込まれたため。 残額は書籍発注に充て、調査予定の期間に刊行された音楽史書および参考文献を購入する。
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