研究実績の概要 |
1870-1945年間に刊行された音楽史署において、近代もしくは現代(moderne)というタームで時代区分を行っている例は確認されなかった。今日の音楽(Musique d'aujourd'hui, Musique contemporaine)という時期区分については、音楽史書の刊行時期に沿って変動しつつも、ある程度の時期区分として用いられている(たとえばLandormy 1910/1923/1942、Woollett 1909-24、Dumesnil 1934)。その際、転換期を象徴する作曲家として「ワーグナー以降」、「ドビュッシー以降」と言及されることが多い。「今日の音楽」という文脈においては1870年がひとつの節目とされる例がみられる(たとえばSere 1915、Tiersot 1918)。こうした傾向は1940年以降に刊行された音楽史書にも一部継承されている(たとえばFrancois-Sappey 2013) いっぽうで、明確な時代区分を避け世紀ごとの区分を原則とする音楽史書が多数を占めていた。とりわけ19世紀、20世紀については、世紀ごとの区分を採用している例が殆どである。
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