研究実績の概要 |
本研究はGPUを利用した高性能な大規模流体解析手法の開発を目的とする。複雑物体を含む乱流現象を高精度に解析するためには、計算領域全体の広域的な流れと物体近傍の局所的な流れを捉えた解析が必須となる。格子ボルツマン法(LBM)は複雑物体に対して高い精度の解析が可能であると共に、単純なアルゴリズムで規則的なメモリアクセスを行うためGPUを用いた大規模計算に適している。しかし、通常のLBMでは乱流解析が不可能であり乱流モデルを適用する必要がある。本研究では、非定常解析に有効なラージエディ・シミュレーションの乱流モデルの一つであるコヒーレント構造スマゴリンスキーモデルを適用することで、高レイノルズ数の流れにおいても安定かつ高精度な解析を可能とした。 構築した解析手法に対して、GPUのカーネル関数および並列化によるノード間通信の最適化を行った結果、東工大のスパコンTSUBAME2.5において、1,024台のGPUで単精度実効性能が298TFLOPSの格子点数が129億、さらに3,968台のGPUを用いた計算では単精度実効性能が1.14PFLOPSの格子点数が499億、の極めて高性能な大規模計算に成功した。 実形状等の複雑物体境界へ対応として、物体表面を三角形の集合体として表現するSTLおよび、STLより構築した符号付き距離関数を利用した手法へと拡張した。本手法を補間bounce-back法と組み合わせることで、静止物体および移動物体を含む乱流解析を高精度に実施できることを示した。 熱の移動を伴う乱流解析および実形状の熱解析においては十分な精度検証に至らなかったが、開発した手法を推進することで実現されることが期待される。今後は解析手法の改良・検証を進めると共に、より高解像度の解析として適合細分化格子(AMR)法を導入し、GPUに適したメモリ構造およびアルゴリズムの最適化を実施する。
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