欧米諸国において2型糖尿病患者の多くは肥満を伴い、インスリン抵抗性の増大が主たる発症の要因といわれている。一方、日本人は遺伝的にインスリン分泌能が低く、インスリン分泌不全を由来とする肥満を伴わない2型糖尿病患者が多くみられる。2型糖尿病治療の基本は食事療法と運動療法であるが、非肥満2型糖尿病患者に対する治療法のエビデンスは十分に得られておらず、主に肥満2型糖尿病患者を対象とした欧米の研究成果に基づいている。国内外の糖尿病治療ガイドラインにおいて食事療法の主目的は減量に位置づけられており、非肥満タイプに対してそのまま適用することには検討の余地がある。非肥満タイプには食事摂取量を抑えるよりも、体重減少が進行しないようエネルギーバランスを保つための摂取量およびその栄養成分比率を提案することが重要である。そこで本研究は、安静空腹時と通常食負荷時の糖・脂質酸化量を測定し、空腹時と食事摂取後の糖・脂質利用比率の変化について健常な普通体重者と比較検討した。その結果、非肥満2型糖尿病患者の血糖値は高値を示しているにも関わらず、糖由来によるエネルギー消費の方が脂質由来よりも有意に働くことが確認された。本結果は、従来考えられていた傾向と異なり、非肥満であっても2型糖尿病患者の糖・脂質代謝能はともに減弱化しており、エネルギー源を効率的に利用できていないことが示唆された。また、非肥満2型糖尿病患者の日常生活下における身体活動量は健常者と比べて差が認められなかった。これらの結果から、体格、身体活動レベル、エネルギー利用能に応じた新たな食事ガイドラインが必要であると考えられる。
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