研究実績の概要 |
研究代表者による論文:T. Tsuda, "Hypergeometric solution of a certain polynomial Hamiltonian system of isomonodromy type", Quart. J. Math. 63 (2012), 489--505 において,ある広いクラスのモノドロミー保存変形方程式の特殊解として,超幾何方程式が現れることを示した.この超幾何方程式は完全積分可能なパフィアン系として与えることができる。また,特別な場合として Gauss, Thomae, Lauricella 等数学者の名が冠された古典的な超幾何方程式を含んでいる。平成26年度はオイラー型の積分表示を用いてリーマン図式から指定される局所的な振る舞いを実現する解の基本系を構成した。古典的な場合に於いても有用な結果と思われる。また,逆に当該のパフィアン系からモノドロミー保存変形方程式を導く手法についても考察した。これらの結果については,論文:T. Tsuda, "On a fundamental system of solutions of a certain hypergeometric equation" にまとめられ,Ramanujan Journal に掲載予定である。 互いに関係する題材ではあるが,有理函数近似の問題とモノドロミー保存変形についての研究も継続的に行った。Hermite による二つの近似問題(Hermite-Pade 近似と同時 Pade 近似)とそれらの間の双対性は,線形常微分方程式のシュレジンジャー変換(モノドロミーを保ちつつ特異点での指数を整数ずらす変換)を導く。また構成のアルゴリズムがベクトル連分数展開によって得られることを示した。近似問題の剰余項はテプリッツ行列式を用いて記述されることから,パンルヴェ方程式等のモノドロミー保存変形方程式の解が持つ行列式構造が自然と理解できる。これらの結果については,琉球大学の眞野智行氏との共著論文:T. Mano and T. Tsuda, "Hermite-Pade approximation, isomonodromic deformation and hypergeometric integral" にまとめられ,現在投稿中である。
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