研究実績の概要 |
モノドロミー保存変形と有理函数近似および連分数展開に関わる研究を行った。研究代表者による論文: T. Tsuda "Hypergeometric solution of a certain polynomial Hamiltonian system of isomonodromy type" Quart. J. Math. 63 (2012), 489--505 において,広いクラスのモノドロミー保存変形方程式の特殊解として,ある超幾何函数が現れることを示した.特別な場合として Gauss, Thomae, Lauricella 等の古典的な超幾何函数を含んでいる。平成27年度はオイラー型の積分表示を用いてリーマン図式から指定される局所的な振る舞いを実現する解の基本系の構成および,当該のパフィアン系からモノドロミー保存変形方程式を導く手法についての論文: T. Tsuda "On a fundamental system of solutions of a certain hypergeometric equation" が Ramanujan Journal 38 (2015) 597-618 にて掲載・発表された。 Hermite-Pade 近似と同時 Pade 近似とそれらの間の双対性は,線形常微分方程式のシュレジンジャー変換(モノドロミーを保ちつつ特異点での指数を整数だけずらす変換)を導く。また構成のアルゴリズムがベクトル連分数展開によって得られることを示した。古典的な Steltjes 型の連分数の高次元拡張になっている点が興味深い。近似問題の剰余項の block テプリッツ行列式表示から,パンルヴェ方程式等のモノドロミー保存変形方程式の解が持つ行列式構造が導かれた。この結果についての琉球大学の眞野智行氏との共著論文: T. Mano and T. Tsuda, "Hermite-Pade approximation, isomonodromic deformation and hypergeometric integral" は Mathematische Zeitschrift に受理され現在印刷中である。当該の研究テーマに関わる研究成果はすでに複数得られており,国際研究集会での講演発表も多数行っている。論文に纏めて出版する行程も進んでおり,研究の進行は順調である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該の研究テーマに関わる研究成果はすでに複数得られており,国際研究集会での講演発表も多数行っている。論文もすでに出版されており、また執筆作業中のものも複数ある。とりわけ,Mathematische Zeitschrift 誌に掲載決定された論文: T. Mano and T. Tsuda, "Hermite-Pade approximation, isomonodromic deformation and hypergeometric integral" の結果は,モノドロミー保存変形と有理函数近似や連分数展開,および超幾何函数の理論などに自然な橋渡しを与えるものであり,様々な特殊な場合に対しても適用可能な手法を提供している。反響も大きいと自負しており,今後の当該分野の研究の一つの礎となり得る良い結果であろう。研究の進行は概ね順調であると考えている。
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