研究課題/領域番号 |
25870235
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
山本 庸平 一橋大学, 大学院経済学研究科, 講師 (80633916)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 構造変化分析 / 仮説検定の棄却力 / 内生性 / データの断絶 / 将来予測 |
研究概要 |
初年度の平成25年度においては、本研究課題の達成に向けて以下のような成果を上げた。研究目的で挙げた3つの課題(A)内生性・弱操作変数問題への対応、(B)データ断絶への対応、(C)将来予測の不安定性、の順に報告する。 課題(A)については、2本の論文がEconometric Theory誌(ET)およびJournal of Applied Econometrics誌(JAE)にそれぞれ公刊された。いずれも計量経済学分野の最高水準の査読付き国際学術誌である。ET論文は経済モデルにおける内生性を考慮した上でいかに構造変化分析を行うかという未解決の問題について精緻な分析を行ったものであり、今後の更なる研究の礎となる。JAE論文は、構造変化分析における弱操作変数の問題を非常に簡単な形で取り扱うことができることを提示した点で、実証分析における有用性の高い論文である。また、平成25年度には後者の結果を応用して為替介入の実証分析を行った論文が査読付き国際学術誌Journal of Banking and Finance誌に公刊された。 課題(B)については、1本の論文が査読付き国際学術雑誌Econometrics Journal誌(EJ)に公刊された。本論文は、大震災などによるデータの断絶を周波数領域へ変換するという手法を用いることで、構造変化の分析において特定の定式化を避けるという手法を提案するものであり、更なる応用研究の可能性を広げるものと考えている。 課題(C)については、平成26年度以降に本格的に取り組む予定であるものの、平成25年度にはその基盤となる論文(これはより一般的な枠組みで構造変化の検定手法を扱ったものである)が、国際的評価の高いEconometric Reviews誌に掲載が決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は「内生性・弱操作変数問題への対応」を中心に進める予定であったため、これについては理論および実証分析の3論文の公刊によりほぼ100%に近い水準で達成できた。「データ断絶への対応」についても1本の論文の公刊があったが、今後は例えばマクロ経済やファイナンス分野などにおける実証分析を進める必要があり、約30%の達成度と考えている。「将来予測の不安定性」については、現在のところ当初予定の10%程度進捗している。本研究課題全体を通じては、平成25年度まで(初年度)の達成度は45%程度と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降は課題(C)を中心に研究を進める。まず、平成25年度中にEconometric Reviews誌に公刊が決定した論文を中心に研究を推進することを考えている。本論文では、例えば大震災やリーマンショックのように経済に比較的大きな不安定性が存在するような環境での構造変化検定の使用に対して、ある種の検定統計量は棄却力を持たないことを解明した。この考えを将来予測の安定性に適用する。また、新たな課題として将来予測の分野では最近「動学的ファクターモデル」の適用につき国際的にも研究が進んでいるため、動学的ファクターモデルを用いた将来予測の安定性についても考察したい。 より具体的には、平成25年度に新たなワーキング・ペーパーを作成し、Econometric Society、日本経済学会を含む6回の国内外の学会で発表を行った他、国内外の5つの主要大学や研究機関におけるセミナーで発表し、参加者から非常に多くの有益なアドバイスを得ることができた。平成26年度以降はこれらを考慮して分析を深め、公刊に至るために研究を継続することを最優先に取り組みたい。とりわけ学会発表においては、構造変化がいつ起こったかについての分析が実証分析上は重要であるという指摘を複数回に渡り受けたため、構造変化点の信頼区間の計算手法についての研究も進めることで本研究成果の有用性をより高めていきたい。 また、当初計画段階に比べ、本プロジェクトはマクロ経済やファイナンスの分野により広く応用が可能であることが判明してきた。このため、これまでの共著者との連携の維持に加えて、新たな協働者の拡充に努めるべく、海外での学会発表や研究滞在はこれまでと同様に積極的に行う。さらに進捗している研究をより我が国の経済社会に還元すべく、日本経済に関する実証分析を行い、学会や個別研究会への参加も積極的に行うことはいうまでもない。
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次年度の研究費の使用計画 |
効率的に準備を進めた結果、予定より安価な航空券を購入することができ、その分の残余額が生じた。 平成26年度の学会発表費用に充当する予定である。
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