研究課題/領域番号 |
25870237
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
久保 信明 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (80343169)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 精密単独測位 / 船舶の位置決定 / ソフトウェアGNSS受信機 / 原子時計 / ドップラ周波数 / 搬送波位相追尾 |
研究概要 |
本研究の要である精密単独測位の実験船での精度検証を実施した。H25年度は3回の実験航海に参加し、精密暦及びクロック情報を用いることで実験船環境でのリアルタイム位置精度性能を予測した(東京湾)。結果は解の収束に30分程度要するものの、数cmのレベルで位置推定が可能であった。サイクルスリップの頻度調査では、大きな橋下を通過する際以外はあまり見られなかった。また実際に国産準天頂衛星より放送されているリアルタイムの精密暦及びクロックの情報を用いた実験を都内道路で車両を用いて実施し、上記と同様の結果を得ることができた。 ソフトウェア受信機での小型原子時計とINSの融合を試みた。原子時計(外部クロック支援)の効果を見るために、受信機の観測データのうち、ドップラ周波数を正確に推定できることを静止データで確認した。また、移動体データを利用して、INSと車速センサー情報でGNSS情報を補完することにより、正確な方位を切れ目なく推定することができた。これら方位情報と原子時計クロックの入力により、受信機の追尾ループにおいて、ドップラ周波数観測データの支援をできるところまで確認した。シミュレータのデータによってもあわせて確認した。 次に、ドップラ周波数観測データを外部より受信機へ支援することにより、追尾性能がどの程度向上するか見極める実験を試みた。通常の追尾ループと支援有りのケースの追尾ループをソフトで実装することにより、シミュレータの信号強度を低下させたときの性能の違いを確認した。搬送波位相追尾において、若干ではあるが性能の改善(追尾できる最低信号強度を下げることができた)が見られた。 移動体実験において利用した高精度ジャイロ(INS)は、製造に時間を要したため、同機種のデモ機を2013年夏よりレンタルしていた。 上記に関連した発表案件:国内学会発表1件、国際学会発表1件
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のH25年度の課題にかかげた、実験船での精度検証とソフトウェア受信機での検証を実施できた。特に実験船での精度検証は複数回のデータを収集できたため、精密単独測位の性能を把握するには十分であった。海洋上において、精密単独測位の解が途切れる場面がどの程度あるか調査したが、実際には大きな橋以外で精度が低下する現象が少ないことがわかった。次にソフトウェア受信機での提案手法の実装を行った。移動体において、方位情報と原子時計クロックの支援を得ることにより、ドップラ周波数の推定を行うことができた。またこれら支援情報より、搬送波位相追尾ループの性能が若干ではあるが、向上することが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
上記の実績及び達成度でも記載したように、海洋上でのGNSSを利用した精密単独測位は、期待できる精密位置決定技術であることがわかった。また課題となるであろうサイクルスリップの頻度が少ないことがわかった。今後は、大きな橋下等で起こっている解の飛びを防ぐ手法を、H26年度の課題に即して進める。実際の移動体での実験は、船舶での実験が大変で回数も限られていることもあり、車両を用いて搬送波位相追尾の性能向上やINS等による解の連続性確保を試みる。また船舶と車両では運動のダイナミクスが異なるため、そのことを可能な限り考慮したい。
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