研究課題/領域番号 |
25870238
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
直井 道生 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (70365477)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 住宅資産価格 / 家計消費 / 労働移動 |
研究概要 |
平成25年度は、主として本研究課題の第1のテーマである家計消費に対する住宅の資産効果に焦点を当てて研究を行った。以下では、主な研究活動の内容とその成果について、概要を述べる。 年度前半には、先行研究のサーベイを行うとともに、分析に必要なデータセットの収集・構築・整備作業を行った。データセットについては、当初の計画に沿って「慶應義塾家計パネル調査」(KHPS) を利用するとともに、これを補足する形で、公表統計である住宅・土地統計調査の都道府県別集計データも利用した。 これらのデータセットを利用し、年度後半には予備的な分析を開始した。分析に当たっては、複数のデータセットを併用した分析を行うことで、得られた知見の定量的な比較可能性を検討した。この研究成果については、直井 (2014a) として発表している。また、住宅資産効果の背後にある経済学的なメカニズムの解明という観点から、家計の損失回避性と住宅資産効果に焦点を当てた分析を行い、直井 (2014b) として発表している。さらに、そこでの研究成果を進展させた形で、さらなる分析を行い、Naoi (2014) を執筆し、査読付き学術誌に投稿を行った。この論文については、現在当該誌からの依頼を受けて再分析・改訂作業を行っている。 【発表論文等】 直井道生 (2014a) 「住宅資産効果の検証―参照点依存型の選好と家計消費」,『三田学会雑誌』,106巻4号,57-71頁./直井道生 (2014b) 「住宅資産と家計の消費行動」,隅田・直井・奥村(編著)『都市・地域・不動産の経済分析』(慶應義塾大学出版会),第1章,3-25頁./Naoi, M. (2014) "Reference-Dependent Preferences and Homeowners' Consumption Responses to Wealth Shocks," submitted.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度に関しては、当初の計画では、データセットの構築・整備とそれを用いた予備的な分析を行うことを目標としていたが、上述の通り、2本の研究論文を執筆・公刊することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には、現在英文査読誌に投稿中の研究成果を公刊することを目指す。そのうえで、当初計画に沿って、(1) 計量経済学的な手法の精緻化、(2) 異なるデータに基づく分析結果の詳細な比較・検討、に焦点を当てて、さらなる研究活動を行っていく。具体的に、(1)に関しては、家計資産の測定の問題、住宅資産の保有に関する内生性、観察できない異質性の存在などを考慮した計量経済モデルの構築を目指す。(2)に関しては、「消費生活に関するパネル調査 (JPSC)」および「くらしと健康の調査 (Japanese Study of Aging and Retirement, JSTAR)」などの国内で利用可能なマイクロデータを活用し、現時点で得られた知見のさらなる検討を進めていく。 これと並行して、本研究課題の第2のテーマである住宅所有と労働移動に関しても、データセットの構築・整備とそれを用いた分析を開始する。そのうえで、各研究テーマから得られた知見を統合し、研究課題全体としての成果の発信に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
分析用データの構築に必要であったGISソフトウェアについて、予備的な作業に関しては所属大学の計算機室にある設備・備品を利用して実施可能であったため。 平成26年度以降に実施する分析作業に当たっては、上記の設備・備品では対応できない作業が発生するため、追加パッケージを含めた当該ソフトウェアが必要となる。そのため、次年度使用額はこの購入に充てることを予定している。
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