本年度は主に不確実性を含むサプライチェーンネットワークにおける競合状態の分析について重点的に研究を行った。 1.昨年度に引き続き、一つの製造業者と複数のサプライヤーが存在するネットワークにおけるリーダーフォロワーゲームを研究した。特に昨年度定式化した一般化ナッシュ均衡問題の解の存在性について、昨年度の議論をさらに発展させることで、妥当な仮定の下で停留ナッシュ均衡が存在することを証明した。 2.サプライヤー、製造業者、市場がそれぞれ複数存在するような3層のサプライチェーンネットワークについても研究を行った。本研究ではではサプライチェーンネットワーク内で生じる競合を扱っている。さらに各プレイヤーは市場を除き同じ層の他プレイヤーの戦略を正確に知ることができないとし、それぞれマキシミン戦略で意思決定した場合のモデル(ロバストサプライチェーンネットワーク均衡(ロバストSCNE)モデル)を定式化した。さらにロバストSCNEモデルの均衡解の性質を調べるため、ロバストSCNEモデルを同値な変分不等式問題として再定式化している。さらに、その変分不等式問題の解の存在性と一意性を証明した。また、定式化した変分不等式問題を2次錐相補性問題へと再定式化することで、求解可能な問題へと変形を行い数値実験を行った。数値実験では、不確実性が増大した場合の、サプライチェーンネットワーク上の物流量の変化などを検証した。さらに、2次錐相補性問題は微分不可能な関数を含む方程式系へと再定式化を行い、求解するため、その方程式系を解くためのアルゴリズムやそれを最小2乗形式にした時の問題を解くためのアルゴリズムについても検討を行った。 3.2の研究を市場の需要が変動する場合に拡張を行った。市場の需要はある分布関数に従っていると仮定し、その状況下での競合を変分不等式問題へと定式化した。また、その均衡解の一意性や存在性についても議論を行った。
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