研究課題/領域番号 |
25870242
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
島 圭介 横浜国立大学, 工学系研究院, 准教授 (50649754)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 立位姿勢保持支援 / ライトタッチコンタクト / 振動刺激 / 非接触インピーダンス / ニューラルネット |
研究概要 |
本年度は,あらゆる空間でLight touch contact (LTC)の効果を被験者に与え,立位能力を仮想的なLTCによって向上させる方法論の確立を目的として研究を実施した. LTCはわずかな力(1N以下)でカーテンなどに触れることで立位・歩行時の重心動揺が低下する現象である.まずあらゆる空間でLTCの効果を与えるため,人間の周りにインピーダンスパラメータ(仮想慣性,仮想粘性,仮想剛性)を有する仮想的な壁を作り,被験者が仮想壁に触れた際の仮想反力の推定を可能とした.具体的には,3次元モーションキャプチャやKinectを用いて体幹および指先の3次元位置を計測し,微分フィルタを用いて速度,加速度を算出する.そしてインピーダンスパラメータを用いた運動方程式により,手先に発生する反力を壁への侵入量,速度,加速度からリアルタイムで推定可能とした.さらに,推定反力を小型の振動デバイスを用いてフィードバックするため,推定反力を振動刺激振幅に対応させた比例制御を実施し,反力に応じた刺激の提示を可能とした. また健常者数名の立位評価実験を実施し,タンデム立位,紙に触れた状態の立位(LTC立位),提案法(仮想LTC立位)の比較を行った.フォースプレートを用いて計測した足圧中心(Center of pressure: COP)から,タンデム立位に比べてLTC立位,仮想LTC立位が被験者の重心動揺を有意に低下させることを明らかにした[MHS2013など口頭発表]. また,評価指標から立位機能の定量的な評価を実施するためには,特徴量から運動機能状態を推定する方法論や,立位状態を表現するモデルが必要である.本年度は2つの従属な入力ベクトルから同時事後確率を推定可能なニューラルネットを考案し,動作識別へ応用した[SICE論文誌掲載].また,指運動や歩行などのリズム運動を再現するモデルを考案し,パーキンソン病の評価へ応用した[SICE論文誌掲載].
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
仮想的な壁を被験者の周りに設置するための3次元モーションキャプチャを用いた指先位置のリアルタイム計測,速度,加速度パラメータの算出方法,ならびに機械インピーダンスモデルに基づく仮想反力の推定方法を既に確立している.また,推定した反力に基づいて小型の振動刺激を制御することで,実際に紙に触れる際に生じるLTCの効果を提案法を用いて擬似的に与えることに成功した.インピーダンスパラメータは任意に設定可能なため,各パラメータが立位状態に与える影響を詳細に議論することが可能である.また本年度に仮想LTCが人間の姿勢動揺を有意に低下させることを示したことにより,センサなどの小型化・ウェアラブル化によってあらゆる空間でLTCの効果を与えられる可能性が示唆された.この結果は,立位モデルの構築や立位機能の定量化に大いに寄与するものである.
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今後の研究の推進方策 |
確立した仮想インピーダンスと振動刺激による仮想LTC法を用いて,倒立振子を用いた人間の立位制御モデルを構築するとともに,モデルパラメータに基づいて立位機能を評価するためのインデックスの定義を目指す.具体的には,倒立振子モデルにLTCによる反力入力,ならびに視覚刺激などの外部入力を考慮した新たなモデルへ発展させることを試みるとともに,シミュレーションによってLTCの再現することを目指す. また,仮想LTC法に含まれるインピーダンスパラメータを変化させた際に被験者の立位状態と重心動揺に与える影響を調査してそれらの関係性をモデル化し,効果的なパラメータについて検討する.さらに加速度パラメータに着目し,小型の加速度センサを用いてLTCの効果を与える新たな方法論について検討を行うとともに,歩行時に仮想LTCを行うことで被験者の姿勢に与える影響を調査する.
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