本研究の目的は,指先へ仮想壁に触れた際の反力を被験者に知覚させてLight touch contactの効果を仮想絵的に与えるVirtual light touch (VLT)法を考案することである.Light touch contact (LTC)はわずかな力で壁やカーテンなどに触れることで立位姿勢動揺が低下する現象である.我々はこの効果をあらゆる空間で被験者に与えるため,仮想的なインピーダンスパラメータ(仮想慣性,仮想粘性,仮想剛性)を有する壁を被験者の周りに生成し,その壁への接触反力を小型の振動子を用いて指先にフィードバックする方法論を構築してきた.これにより,被験者の立位能力を向上させる方法論の確立を目指している. 本年度は,これまでに構築してきたVLT法の有効性を検討する様々な検証と応用を実施した.具体的には,これまで検証してきた仮想壁のインピーダンスパラメータの変化から,加速度センサと小型の振動子を利用した,小型・軽量かつウェアラブルな仮想壁提示デバイスを開発し,加速度センサのみで立位および歩行時に重心動揺を低下させられることを示した[AROB2016口頭発表,SI2015口頭発表など].また,VLT法に基づいて転倒リスクを評価するための立位機能評価法のプロトタイプを開発し,健常若年者と高齢者の立位機能を定量化できるインデックスの可能性を示した[BIOCAS2015口頭発表など]. 本研究により,仮想LTCの実現,ウェアラブルデバイスの開発,立位機能評価インデックスの提案を実現した.今後はこれらの成果をもとに,高齢者の転倒予防実現に向けた実用的なデバイス開発へ発展させていく予定である.
|