研究課題
本研究の目的は、内側側頭葉てんかんの主要な病態である海馬硬化症について、形態と機能の両面から病態形成機序の解明に迫ることである。そのために、まず、手術で摘出されたヒトの脳組織から生鮮脳スライス標本を作製して、光学的イメージング法により神経活動の解析を行った。その後、同一標本を固定・染色して苔状線維の走行や病理組織学的変化などの検討を行った。最終年度においては26例、研究機関全体を通して48例のてんかん手術検体を用いた脳スライスイメージング実験を行った。その結果、内側側頭葉てんかんにおいて海馬硬化が明瞭でない症例においても、すでに海馬支脚においてHyperactivityが生じていることが明らかとなった。このHyperactivityはevoked response, spontaneous firing ともにおいて認められ、海馬硬化が明らかでない群、軽度群(CA1のみ)、重度群(CA1,3,4)いずれにおいてもほぼ全例で認められた。一方で、歯状回顆粒細胞におけるrecurrent activityが重度群に限って生じている可能性が示唆された。この結果はTIMM染色による所見とも一致し、両者を総合して考察すると、苔状繊維発芽が重度海馬硬化群においては生じている可能性が示唆された。これらの結果は、内側側頭葉てんかんにおける海馬硬化症はhomogenousな疾患ではなく、病理組織学的なgradingに関連した、病態メカニズムが存在することが推察された。更なる研究を推進することで、内側側頭葉てんかんにおける海馬硬化症の意義が明らかになれば、てんかん原性のメカニズム解明につながり、新たなてんかんの診断・治療法の開発に寄与できると期待される。
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PlosOne
巻: 19 ページ: 88549
10.1371/journal.pone.0088549
J Neuroimg
巻: 24 ページ: 595-598
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