本研究の目的は生命活動に必須の栄養素であるリンの生体内調節機構における、老化関連因子であるklothoと腎近位尿細管に発現するエンドサイトーシス受容体であるメガリン、この両者が担う役割を解明することである。 前年度までに従来そのタンパク質サイズから糸球体を濾過しないと考えられえていたklothoタンパク質が、全長のままないし切断された形態で糸球体を濾過する可能性をメガリンノックアウトマウスを用いることで示すことができた。よって本年度は糸球体を濾過することが明らかになったklothoタンパク質が糸球体を濾過した後に近位尿細管細胞に作用し、リン代謝調節に寄与する可能性を当初の予定通り検討した。 まず培養近位尿細管細胞を用いてklothoタンパク質がリン輸送に与える影響の検討を試みたが、実験条件や細胞の特性が原因と考えられるが、実験系の確立に至っていない。しかし、メガリンノックアウトマウスで示された糸球体を濾過するklothoの組換え体合成並びに精製は確立し、klothoノックアウトマウスを用いたレスキュー実験を開始することができた。klothoノックアウトマウスに糸球体濾過する形態である組換え体klothoを投与し、リン代謝調節の回復を認めるデータを得ている。現在再現性の確認を行っており、メガリンを介したklothoの近位尿細管における役割解明が期待される。
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