研究課題
病原体を察知する自然免疫センサーは、その内因性リガンドよって非感染性の慢性炎症に関与し、肥満やメタボリック症候群の進展に重要な役割をもつことがわかってきた。我々は、Toll様受容体RP105とその会合分子MD-1の欠損マウスにおいて、高脂肪食誘発性の肥満や脂肪組織炎症が緩和していることを見出した。本研究では脂肪組織の慢性炎症におけるRP105/MD-1の機能を明らかにする。1)RP105/MD-1の発現を制御するメカニズムの解明RP105の細胞表面への発現には、MD-1との相互作用が重要であることが報告されている。一方MD-1は、RP105と相互作用していない可溶型が存在し、高脂肪食摂餌によりマウス血中の可溶型MD-1が増加することを見出した。更に可溶型MD-1が、内臓脂肪組織の脂肪細胞以外の細胞から産生されることがわかった。肥満に伴いマクロファージが内臓脂肪組織に浸潤することから、脂肪細胞株とマクロファージ細胞株の共培養をおこない、可溶型MD-1の産生が増加することを見出した。脂肪細胞株では、MD-1のmRNAが検出できないことから、マクロファージが脂肪細胞と相互作用することによって、可溶型MD-1を産生することが示唆された。2)脂肪組織炎症に関与するRP105/MD-1発現細胞の解析血球系と非血球系のいずれのRP105/MD-1発現細胞が、脂肪組織炎症に関与するのか明らかにするため、RP105と野生型マウスの骨髄細胞を相互に移植した骨髄キメラマウスの作出し、高脂肪食を摂餌させ脂肪組織炎症を解析中である。また、マクロファージ特異的なコンディショナルノックアウトマウスの作出をおこなっている。
4: 遅れている
昨年度の本大学の動物施設の改修工事によるマウスの飼育数の制限やマウスの飼育環境の変化により、正確な肥満に伴う脂肪組織炎症の解析が困難であったことから、マウスの個体数が必要になった。更に、X線照射装置の使用制限により、研究計画が遅延した。
1)RP105/MD-1の内因性リガンドの探索市販の各種脂質ライブラリーをプレートに固定化し、組換えMD-1と抗MD-1抗体を用いて、MD-1と相互作用する脂質を探索する。2)脂肪組織炎症に関与するRP105/MD-1発現細胞の解析脂肪組織炎症に関与するRP105/MD-1発現細胞ならびに可溶型MD-1産生細胞の同定を行うため、野生型マウスとRP105またはMD-1欠損マウスの骨髄細胞を相互に移植した骨髄キメラマウスやマクロファージ特異的なコンディショナルノックアウトマウスに高脂肪食を摂餌させ、体重の経時変化と共に内臓脂肪組織炎症の解析を行う。3)RP105/MD-1の発現を制御するメカニズムの解明。脂肪細胞とマクロファージの相互作用による可溶型MD-1の増加が、直接的な相互作用によるのか、または液性因子によるのかトランスウェルを用いて明らかにする。
骨髄キメラマウスやコンディショナルノックアウトマウスの作出が遅延しているため、マウスの解析に必要な試薬等の購入費が少なくなった。
骨髄キメラマウスやコンディショナルノックアウトマウスに高脂肪食を摂餌させ、インスリン抵抗性試験や内臓脂肪組織の炎症をフローサイトメトリー法ならびにリアルタイムPCR法で解析するための抗体や試薬の購入費に充てる。
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http://www.med.u-toyama.ac.jp/immbio/