研究課題/領域番号 |
25870264
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松田 洋介 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (80433233)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 進路指導 / 職業教育 / 近代学校 / 全国進路指導研究会 / 教育科学研究会 |
研究実績の概要 |
ノンエリート向けの教育をめぐって1970年代の社会変動の中で民間教育実践・理論がいかなる変容を迫られたのかを2つの点から明らかにした。 第一に、「「閉じられた競争」の成立と進路指導問題の変容」-1970年代以降の全国進路指導研究会の展開に焦点をあてて-」『教育目標・評価学会紀要』第24号,2014年では、1970年代以降の全国進路指導研究会の展開に焦点をあて、戦後の民間教育運動が「偏差値」と「内申書」という子どもの進路を規定する二つの指標をいかに捉え、それらをいかに組み直そうとしたのかを検討した。「偏差値」と「内申書」に対する批判が高まり、それらを全廃することを求める声も出てくる一方で、全進研は、学校現場での競争状況は、そうした指標それ自体によって生じているわけではないと指摘した上で、それらを全廃するよりは、ましなやり方で使いこなすことが大事だと考えた。とりわけ、全進研は、偏差値と内申書による進路指導は、子どもたちの進路を抽象化してしまうことに問題を求め、子どもたちが個別具体的な文脈で進路指導をするための実践を重ねた。 第二に、「第4章 教科研は教育の平等をいかに追求してきたのか」『戦後日本の教育と教育学』(かもがわ出版)では、戦後の代表的な民間教育研究団体である教育科学研究会における教育の平等理念が1970年代にいかに変容したのかを検討した。1970年代初頭に完成した堀尾教育学は、労働者階級の文化に即して近代学校を再編するという理論的ポテンシャルを持っていたものの、現実の教育運動ではそれがいかされなかった。それに対して、1970年代に黒崎勲と中内敏夫が堀尾理論にかわって既存の新中間層向けの学校教育のあり方を、労働民衆の文化に即して再編する指向性をもつ理論枠組みを提示したものの、当時の民間教育運動にはさほど受け入れられなかった点を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国進路指導研究会については、1970年代以降の転換を明らかにした学会論文をまとめることが出来、順調に進展しているといえる。また、民間教育運動団体のナショナルセンターともいえる教育科学研究会についてまとめた論文が掲載された書籍が刊行され、さらには工業教育・技術教育を担う技術教育研究会についても、その中心的な人物であった佐々木享氏に焦点をあてた研究を、日本教育学会大会の課題研究にて報告することが出来た。その分、全国高校生活指導研究協議会についての検討はさほど進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、最終年度として、1970年代における戦後型「ノンエリート教育」の形成プロセスをより立体的に検討していく予定である。2年間研究をすすめる中で、高校生活指導研究会の研究を進めるよりも、中学校教育をめぐる問題把握を優先した方が良いと考え、第一に全国進路指導研究会と密接に関係のあった産業教育連盟、他方で、その対極にある技術教育研究会の両者に焦点をあてつつ、労働者階級教育としての技術教育が戦後いかに構想されていたのかを検討していく。技術教育研究会について検討したものを日本教育学会大会にて、産業教育連盟について検討したものを教育目標評価学会にて報告する予定である。また、戦後の民間教育運動団体の動きをより包括的に検討したものを、日本教育社会学会の課題研究にて報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費・謝金での支出が少なかったため、若干の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
資料整理の謝金として活用する予定である。
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