研究課題
若手研究(B)
慢性C型肝炎患者におけるDNA chip解析により、IL28Bマイナー型患者及び線維化の進行した患者ではTGFβやTGFβレセプターの発現が有意に増加していることを見出した。興味深いことに、TGFβシグナルの伝達タンパク質であるSMADとIFN応答抑制系に働くFOXO3とSOCS3の発現に正相関が認められた。TGFβはJNK-cJunシグナルを活性化させ、FOXO3の発現誘導に関与していることを見出した。更に、TGFβは栄養センサー及びIFN応答に関わるmTORシグナルの活性を減弱させることを見出した。これらTGFβによるIFNシグナル阻害はHCVの複製を有意に増強させた。一方で、TGFβ存在下のHCV感染細胞に分岐アミノ酸(BCAA)を処置することで、BCAAによるTGFβシグナルの減弱、FOXO3, SOCS3の発現抑制を導き、HCVの複製が有意に抑制されることを見出した。本研究において、肝線維化に伴うTGFβのIFN治療抵抗性を引き起こすメカニズムを解明することが出来た。BCAAは栄養不良状態におけるIFN治療抵抗性の改善のみならず、TGFβによる治療抵抗性の改善においても有用であるという結果を得た。更に、申請者は、網羅的遺伝子発現解析よりIL28B特異的に強く誘導される41個の遺伝子を同定した。その中で、ある分泌蛋白質に着目した。この分泌蛋白質過剰発現下では、内在性ISGs発現は有意に増加し、HCVの複製は有意に抑制されることを見出した。IL28BはIFNシグナルや免疫応答シグナルを介し抗ウイルスに働くといったIFNαと共通の機能がある一方、IL28B特異的に誘導される遺伝子やシグナル伝達系が存在し、IFNαとは独立した機能的役割を有していることを示唆する結果を得た。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は、TGFβがIFN治療抵抗性を引き起こすメカニズムを解明することが出来た。更に、IL28B特異的に強く誘導される41個の遺伝子を同定し、その遺伝子の中である分泌蛋白質に着目した研究を行なっている。その遺伝子のトランスジェニックマウス、ノックアウトマウスの作出にも成功している。以上の事から、当初の計画以上に進展している。
申請者はIL28B特異的誘導遺伝子を同定し、その中である分泌蛋白質に着目した。今後はその分泌蛋白質の詳細な機能解析を行う。この分泌蛋白質はIFN応答を正に制御している分泌蛋白質であり、ウイルス感染後の自然免疫や獲得免疫に重要な役割を担っていると示唆される結果を得ている。更に、トランスジェニックマウス、ノックアウトマウスの作出に成功している。この分泌蛋白質の詳細な機能解析を培養細胞及びマウスを用いた実験系で行うことにより、新規治療法にこの分泌蛋白質が応用出来るか検討する。更に、治療効果を規定する新規バイオマーカーとなり得るか検討する。
当該年度の培養細胞を用いた研究計画が順調に進んだことや、次年度には培養細胞系での解析よりもモデルマウスを用いた解析に重点を置いた研究を行うため。次年度はより多くの解析項目があり、当該年度よりも研究経費が必要になると判断したため。マウスの組織や血液、RNA等大量の生体サンプルの解析が必要となる。解析に必要な設備は整っている。消耗品として、蛋白質や遺伝子解析用試薬、レポーターアッセイ用試薬、細胞培養器具、抗体、形質導入試薬、その他の試薬類が必要となる。本研究の計画や遂行の妥当性を確認し、より優れた成果をあげるため、国内学会・国際学会に参加し最新の知識を入手するための旅費を計上している。次年度は、本研究の成果を広く発信するため、国内学会・国際学会参加のための旅費と国際的学術誌への論文投稿料が必要である。
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